低尿酸血症(Hypouricemia)ガイド

2025年4月30日 | 医学情報まとめ

低尿酸血症の基本

血清尿酸値が2.0 mg/dL以下を持続的に示す状態
📊 頻度: 日本では男性0.2%、女性0.4%程度
📝 診断基準: 尿酸値≤2.0 mg/dLが2回以上確認
🔬 腎性型の特徴: 尿酸排泄率(FEUA) > 10%

原因分類

1️⃣ 腎性低尿酸血症(RHUC)

腎臓での尿酸再吸収障害により尿中に過剰排泄

分類 遺伝子/輸送体 特徴
RHUC1 URAT1 / SLC22A12 日本で最多型
RHUC2 GLUT9 / SLC2A9 著明な尿酸排泄↑

2️⃣ 尿酸産生低下型

  • 遺伝性キサンチンオキシダーゼ欠損
  • 栄養性肝障害・重症栄養不良
  • 薬剤性アロプリノール・ラスブリカーゼなど

3️⃣ 二次性低尿酸血症

  • Fanconi症候群
  • SIADH・脳性塩喪失症候群
  • アルコール多飲

症状・合併症

⚠️ 注意! 遺伝性腎性低尿酸血症では激しい運動後の急性腎障害リスクあり
合併症 機序
運動誘発急性腎障害(EIAKI) 激運動+低UAで腎虚血・酸化ストレス
尿路結石 過剰尿酸排泄に伴う結晶析出
反復筋痛・倦怠感 抗酸化物質低下の影響か
典型シナリオ: 陸上部・自衛隊など若年男性でラン後に乏尿・血尿

診断の流れ

1️⃣ 血清尿酸値測定(低値を確認)→ 2回以上で持続性を確認
2️⃣ 腎機能・肝機能・電解質を同時測定し二次性原因を除外
3️⃣ 尿酸排泄率(FEUA)を算出:
FEUA(%)=(尿酸/Cr)尿 ÷ (尿酸/Cr)血 ×100
📌 FEUA > 10% なら腎性低尿酸血症が強く疑われる
4️⃣ 遺伝子検査: 難治性・家族歴・重度例ではSLC22A12/SLC2A9変異を検索

治療・予防戦略

💧 遺伝性腎性低尿酸血症

🚰 十分な水分摂取: 運動前後に500–1000mL
🏃 全力・無酸素運動の回避: 特にNSAIDs服用時や発熱時
💊 尿alkalization: 結石既往があればクエン酸カリウム等

💊 産生低下型・二次性

原因 対応
薬剤性 原因薬剤を可能なら中止・減量
xanthinuria 高プリン食避け+水分摂取
SIADH 原病態治療+水制限

生活指導のキーポイント

💧 水分摂取: 1日2L以上、運動・発熱時は追加
🏃 運動: ウォーミングアップとクールダウンを入れる
💊 薬剤: 市販NSAIDsの乱用を避ける
📅 定期検査: 年間1–2回の腎機能・尿酸チェック

まとめ

低尿酸血症は「痛風と真逆の話題」のため見過ごされがちですが、遺伝性腎性低尿酸血症では運動誘発急性腎障害の予防が最重要です。
🔍 健診で低値を発見したら:
  1. 持続性の確認
  2. FEUA測定
  3. 家族歴・症状の聞き取り
日常ケアの重要3原則:
💧 水分
🏃 無理な運動を控える
💊 NSAIDs乱用しない