子どもの起立性調節障害
子どもの起立性調節障害
起立性調節障害(OD)は、主に思春期の子どもたちに見られる自律神経の不調です。立ちくらみやめまい、朝起きられない、疲れやすいなどの症状が特徴的です。これらの症状は、立ったり座ったりしたときに血液の循環がうまくいかないことで起こります。
ODは珍しい病気ではありません。小学生の約5%、中学生の約10%がこの症状を持っているといわれています。女の子は男の子の1.5〜2倍多く見られます。また、約半数の子どもには遺伝的な傾向があるようです。
ODの症状は、朝や午前中に強く現れ、午後になると良くなることが多いです。また、春から夏にかけて症状が悪化しやすいという特徴もあります。重症になると、学校を休みがちになったり、日常生活に支障をきたすこともあります。
でも、心配しないでください。ODは適切な治療と生活の工夫によって必ず良くなる病気です。軽い場合は数か月で改善しますし、重い場合でも2〜3年ほどで多くの子どもたちが回復しています。大切なのは、「怠けている」のではなく、れっきとした病気だということを理解し、焦らずにゆっくり治していくことです。
起立性調節障害(OD)の主な原因は、体の姿勢を変えたときに血液の循環をうまく調整できないことです。具体的には、次のような仕組みで症状が起こります。
私たちの体には、意識せずに体の機能を調整する「自律神経」があります。ODでは、この自律神経の働きがうまくいかなくなっています。
立ち上がったときに、重力の影響で血液が下半身に集まります。健康な人の体では、すぐに心臓が強く鼓動して血液を脳に送り返しますが、ODの人はこの調整がうまくいきません。
その結果、脳への血流が一時的に減少し、めまいや立ちくらみなどの症状が現れます。
不規則な生活リズムや運動不足、ストレスなども症状を悪化させる要因になります。
思春期は体が急速に成長する時期です。この急激な変化に体の調整機能が追いつかないこともODの原因の一つと考えられています。
ODには遺伝的な傾向があることがわかっています。家族にODの人がいると、なりやすい傾向があります。
暑さや寒さなどの温度変化、騒音や光など、外部環境の刺激もODの症状を引き起こしたり悪化させたりすることがあります。
これらの要因が複雑に絡み合って、ODの症状が現れます。一人ひとりの原因や症状の現れ方は異なるので、医師と相談しながら、自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。
起立性調節障害(OD)の症状は多岐にわたり、人によって現れ方が異なります。主な症状には以下のようなものがあります。
急に立ち上がったときに、目の前が暗くなったりふらついたりします。
頭がグルグル回るような感覚や、体のバランスが取りにくくなることがあります。
朝になっても体がだるく、なかなかベッドから起き上がれません。
少し動いただけで疲れを感じ、体がだるくなります。
特に起床時や立ち上がったときに頭痛を感じることがあります。
心臓がドキドキしたり、胸がゾワゾワする感覚があります。
顔色が青白くなることがあります。
食べる気が起きない、または食べても楽しくないと感じることがあります。
イライラしたり、気分が沈んだりすることがあります。
勉強や作業に集中できず、成績が下がることもあります。
これらの症状は、通常、午前中に強く現れ、午後になると改善することが多いです。また、季節によっても症状の強さが変わることがあり、多くの場合、春から夏にかけて悪化する傾向があります。
重要なのは、これらの症状が1か月以上続く場合、ODを疑う必要があるということです。症状が3つ以上ある場合、または2つでも症状が強い場合は、医療機関を受診することをおすすめします。早期発見・早期治療が、より早い回復につながります。
起立性調節障害(OD)の治療は、症状の程度や原因によって異なりますが、主に以下のような方法があります。
治療の効果は個人差がありますが、適切な治療を続けることで、多くの場合症状は改善します。軽症なら数か月、中等症なら1〜2年、重症でも2〜3年程度で回復することが多いです。
重要なのは、自分の体調をよく観察し、無理をせずに徐々に回復を目指すことです。また、定期的に医師の診察を受け、症状の変化や治療の効果を確認することが大切です。
起立性調節障害(OD)から回復した後も、再発を防ぎ健康を維持するために、以下のことに気を付けていくことが大切です。
ODは決して珍しい病気ではありません。多くの人が経験し、克服しています。この経験を通じて自分の体や心との付き合い方を学び、より健康的な生活を送るきっかけにしてください。困ったときは一人で抱え込まず、家族や先生、医師などに相談しましょう。