骨粗鬆症
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨の密度と質が低下し、骨が脆くなる病気です。この病気になると、骨折のリスクが著しく高まります。特に閉経後の女性や高齢者に多く見られますが、若い人でも発症することがあります。
人間の骨は、常に古い骨が壊され、新しい骨が作られるというサイクルを繰り返しています。これを骨代謝と呼びます。若いうちは骨を作る速度の方が速いのですが、年齢とともに骨を壊す速度の方が速くなります。骨粗鬆症は、この骨代謝のバランスが崩れて、骨を壊す速度が骨を作る速度を大きく上回った状態です。
骨粗鬆症の進行は静かで、初期には症状がほとんどありません。そのため、「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれています。多くの場合、骨折が起きて初めて骨粗鬆症に気づくことがあります。
特に注意が必要なのは、脊椎(背骨)、大腿骨頚部(太ももの付け根の骨)、手首の骨折です。これらの部位の骨折は、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。脊椎の骨折は背中の痛みや身長の縮小、姿勢の変化を引き起こし、大腿骨頚部の骨折は寝たきりの原因になることもあります。
日本では、40歳以上の男性の約4人に1人、女性の約2人に1人が骨粗鬆症またはその予備軍と推定されています。高齢化社会の進展に伴い、骨粗鬆症患者数は増加傾向にあります。
骨粗鬆症の診断には、主にDXA法という方法で骨密度を測定します。また、レントゲン検査や血液検査も行います。早期発見・早期治療が重要なので、定期的な検査を受けることが大切です。
骨粗鬆症は完治が難しい病気ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、骨密度の低下を抑え、骨折のリスクを減らすことができます。治療には薬物療法、運動療法、食事療法などがあり、個人の状態に合わせて最適な方法が選択されます。
骨粗鬆症の原因は複雑で、複数の要因が関係しています。主な原因として以下のものが挙げられます。
年を重ねるにつれて、骨を作る細胞(骨芽細胞)の活動が低下し、骨を壊す細胞(破骨細胞)の活動が相対的に高まります。これにより、骨密度が徐々に低下していきます。
女性の場合、閉経後にエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が急激に減少します。エストロゲンには骨を保護する作用があるため、その減少は骨密度の低下を加速させます。男性の場合も、加齢に伴うテストステロン(男性ホルモン)の減少が骨密度低下の一因となります。
骨密度や骨の構造には遺伝的な影響があります。両親や兄弟姉妹に骨粗鬆症がある場合、自分もなりやすい傾向があります。
体重が軽すぎると、骨にかかる負荷が少なくなり、骨密度が低下しやすくなります。また、脂肪組織から分泌されるエストロゲンも少なくなります。
いくつかの病気が骨粗鬆症のリスクを高めます。
長期的な使用で骨密度を低下させる薬があります。
これらの要因が単独または複合的に作用して、骨粗鬆症のリスクを高めます。自分に当てはまる要因がないか確認し、可能な限りリスクを減らす努力をすることが大切です。また、定期的な検診を受けて、早期発見・早期治療につなげることが重要です。
骨粗鬆症は初期段階ではほとんど症状がないため、「サイレントディジーズ(静かな病気)」と呼ばれています。しかし、病気が進行すると以下のような症状が現れます
骨粗鬆症の最も重要な症状は骨折です。特に注意が必要なのは以下の部位です。
これらの骨折は、軽い衝撃や日常的な動作でも起こることがあります。
脊椎の圧迫骨折により、急性または慢性の痛みが生じます。痛みは立ったり歩いたりすると強くなり、横になると楽になる傾向があります。
脊椎の圧迫骨折が進行すると、背骨が縮んで身長が低くなります。若い頃と比べて3〜4cm以上身長が縮むと、骨粗鬆症の可能性が高くなります。
脊椎の圧迫骨折により、背中が丸くなっていきます。いわゆる「腰が曲がる」状態です。これにより、見た目の変化だけでなく、バランスの悪化や呼吸困難などの問題も生じる可能性があります。
痛みや姿勢の変化により、日常生活動作が制限されます。歩行が困難になったり、家事や趣味の活動ができなくなったりすることがあります。
脊椎の変形により胸郭が狭くなると、肺の機能が低下し、息切れや呼吸困難を感じることがあります。
脊椎の変形により腹部が圧迫され、胃酸の逆流や便秘などの消化器症状が現れることがあります。
骨折の痛みや活動制限により、不安やうつ状態になることがあります。また、姿勢の変化による外見の変化で自尊心が低下することもあります。
骨折や痛みによる活動制限、姿勢維持のためのエネルギー消費増加などにより、疲れやすくなることがあります。
これらの症状は、必ずしも全ての人に現れるわけではありません。また、似たような症状は他の病気でも起こる可能性があるため、これらの症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが重要です。
骨粗鬆症の早期発見には、定期的な骨密度検査が有効です。特に閉経後の女性や高齢者は、症状がなくても定期的に検査を受けることをお勧めします。早期に発見し、適切な治療を開始することで、重篤な骨折を予防し、QOL(生活の質)の低下を防ぐことができます。
骨粗鬆症の治療は、骨折リスクの軽減と骨密度の増加を目的として行われます。治療方法は主に以下の3つに分類されます
骨粗鬆症の主な治療法であり、様々な種類の薬が使用されます。
最も一般的に使用される薬剤です。骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑え、骨密度を増加させます。
例:アレンドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸など
エストロゲンと同様の働きをして骨を保護します。乳がんのリスクも低下させる効果があります。
例:ラロキシフェン
骨を作る細胞(骨芽細胞)を刺激し、新しい骨を作ります。重症の骨粗鬆症に使用されます。
例:テリパラチド
破骨細胞の形成と機能を抑制します。
例:デノスマブ
カルシウムの吸収を促進し、骨形成を助けます。
例:アルファカルシドール、エルデカルシトール
骨の主成分であるカルシウムを補給します。
適度な運動は骨密度を増加させ、筋力とバランス感覚を向上させます。
ウォーキング、ジョギング、階段昇降などの体重を支える運動
筋力トレーニングや重りを使った運動
転倒予防のためのバランストレーニング
治療法の選択は、患者の年齢、性別、骨密度、既存の骨折の有無、他の疾患の有無などを考慮して個別に決定されます。多くの場合、薬物療法と運動療法、生活習慣の改善を組み合わせて行います。
治療効果の判定は、定期的な骨密度測定や血液検査、レントゲン検査などで行います。通常、治療開始後6ヶ月〜1年で効果を確認し、効果が不十分な場合は治療法の変更を検討します。
骨粗鬆症の治療は長期にわたるため、患者さんの理解と協力が不可欠です。医師の指示に従って継続的に治療を受け、定期的に効果を確認することが重要です。また、副作用や新たな症状が現れた場合は、すぐに医師に相談することが大切です。
骨粗鬆症と診断された後、または治療を開始した後は、以下のことに気を付けていく必要があります。
骨粗鬆症は、適切な治療と生活習慣の改善により、進行を遅らせたり、場合によっては骨密度を増加させたりすることができます。しかし、それには長期的な取り組みが必要です。医療従事者のアドバイスを守り、自己管理を継続することが重要です。何か不安なことや分からないことがあれば、遠慮なく医師や看護師、薬剤師に相談してください。骨粗鬆症と上手く付き合いながら、健康的で活動的な生活を送ることが可能です。