MASLD（代謝機能障害関連脂肪肝疾患）
MASLD（代謝機能障害関連脂肪肝疾患）｜つじファミリークリニック｜大野城市東大利にある内科・ペインクリニック
MASLD（代謝機能障害関連脂肪肝疾患）
代謝機能障害関連脂肪肝疾患（MASLD）は、以前は非アルコール性脂肪肝疾患（NAFLD）として知られていましたが、その名前が示す通り、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する病状です。この状態は、単に体内の脂肪量が増えるだけでなく、肝臓の健康に深刻な影響を及ぼし、肝炎、肝細胞の損傷、そして慢性的な病態へと進行する恐れがあります。最終的には、肝硬変や肝臓癌のリスクを高め、生命を脅かす結果を招くこともあります。
この病状は世界中で広く見られ、成人だけでなく子供にも影響を与えています。特に注目すべきは、MASLDが肥満や2型糖尿病、高血圧などの代謝性疾患と強く関連している点です。これらの疾患は、生活習慣病として知られ、不健康な食生活や運動不足、遺伝的要因などによって引き起こされることが多いです。したがって、MASLDは単なる肝臓疾患ではなく、広範な健康問題の指標とも言えます。
肝臓は体内で重要な役割を果たしているため、その健康状態は全身の健康を反映します。肝臓は、血液中の有害物質の解毒、栄養素の代謝と貯蔵、血糖値の調節など、生命維持に不可欠な多数の機能を担っています。そのため、MASLDによる肝機能の低下は、体全体に様々な負の影響を及ぼす可能性があります。
MASLDの診断と管理において、初期段階での対応が重要となります。早期発見と生活習慣の改善により、肝臓への負担を最小限に抑え、病状の進行を遅らせることが可能です。健康的な食事、定期的な運動、体重管理、節酒が、この疾患の予防と治療における主要な戦略として推奨されています。医療専門家は、患者一人一人の状態に合わせてオーダーメイドの治療計画を立て、必要に応じて薬物療法やその他の介入を提案します。
代謝機能障害関連脂肪肝疾患（MASLD）の発症には、生活習慣と遺伝的素因が複雑に絡み合っています。不健康な食生活、運動不足、遺伝的な要因が、主な発症リスクとされています。これらの要因は、体内の脂肪代謝に異常をきたし、特に肝臓への脂肪蓄積を促進することで、MASLDへと進展します。
具体的には、高カロリーで栄養バランスの悪い現代の食生活において、飽和脂肪酸や単純糖質の過剰摂取が、肝臓での脂肪合成を亢進します。 これらの栄養素は適量であれば問題ありませんが、とり過ぎは肝臓の脂肪蓄積を助長し、MASLDのリスクを高める要因となります。
運動不足もまた、MASLDの重大な危険因子の一つです。定期的な身体活動は、脂肪の代謝を促進し、インスリン感受性を高めることで、体内の脂肪バランスを整えます。したがって、運動不足の状態では脂肪が過剰に蓄積しやすくなり、MASLDを発症しやすい身体環境が形成されてしまいます。
さらに、遺伝的な素因もMASLDの発症に関与することが明らかになっています。特定の遺伝子多型を持つ個人は、肥満やインスリン抵抗性を来たしやすく、結果としてMASLDを発症するリスクが高まります。これは、MASLD発症の家族集積性の一因とも考えられています。
このように、MASLDの病因には複数の要素が関与していますが、そのほとんどは生活習慣と密接に結びついています。つまり、食生活の是正や運動習慣の獲得といった日常の心がけによって、MASLDの発症リスクを大幅に下げることが可能なのです。加えて、MASLDの家族歴がある場合には、より積極的な予防対策を講じることが肝要です。健康的なライフスタイルを身に着け、定期健診で早期の異常を察知し、適切な対処を行うことで、MASLDのリスクを最小限に抑え、肝臓の健康を守ることができるでしょう。
代謝機能障害関連脂肪肝疾患（MASLD）では、初期の段階で明確な症状が表れにくいことが特徴です。そのため、多くの患者が自身の病状を認識せずにいることがあり、病状が進行した後になって初めて診断されるケースも少なくありません。症状の出現が遅れる理由の一つは、肝臓が高い再生能力を持ち、かなりのダメージを受けるまでその機能を維持できるためです。
MASLDの症状が現れ始めた場合、最も一般的なのは倦怠感です。この倦怠感はMASLDに特異的な症状ではありませんが、通常の休養では改善しないことが特徴的です。 また、原因不明の体重減少や腹部不快感、特に右上腹部の圧痛を伴うこともあります。こうした症状は、肝臓の異常を示唆するサインとして認識する必要があります。
MASLDが進行すると、より深刻な兆候が表れ始めます。黄疸（皮膚や眼球結膜の黄染）は、ビリルビンの代謝が滞っていることを示します。また、肝機能の低下によって腹水（腹腔内への液体貯留）や肝性脳症などの重篤な合併症を来たし、生命の危機に直面することもあります。
このような症状が見られた際には、速やかに医療機関を受診し、適切な精査と治療を受けることが重要です。特に、原因不明の倦怠感や体重減少、腹部の不調が持続する場合は、早期に専門医の診察を仰ぐことが賢明です。MASLDの早期発見と介入は、病状の進展を食い止め、より良い予後を得るために不可欠なのです。
MASLDのリスクは生活習慣の改善によって下げることができますが、すでに症状が出現している場合は、医療専門家の指導の下で適切な治療計画を立てる必要があります。定期的な健康チェックと自身の体調変化への注意深い観察により、MASLDの兆候を早期に捉え、健康被害を最小限に食い止めることが可能となるでしょう。
代謝機能障害関連脂肪肝疾患（MASLD）の治療は、主に病状の進行抑制と肝臓へのダメージ軽減を目的としています。現時点では、MASLDに対する特異的な治療薬は承認されていませんが、生活習慣の是正が病状管理の中心的アプローチとなっています。
MASLDの管理において、生活習慣の改善は基本中の基本です。具体的には以下の要素が含まれます。
特定の症状や合併症を有する患者、または生活習慣の改善のみでは十分な効果が得られない場合には、薬物療法が検討されます。インスリン抵抗性改善薬（チアゾリジン誘導体など）や肝臓の線維化を標的とした薬剤（ビタミンEなど）が使用されることがありますが、これらは専門医の厳密な管理下で投与されます。
末期のMASLD、すなわち肝硬変や肝不全に至った患者においては、肝臓移植が最後の治療選択肢となります。 肝移植は、他の治療法が奏功しない重篤な肝疾患患者の命を救う可能性を秘めています。
MASLDの治療と管理は、患者一人一人の病状に合わせたテーラーメイドのアプローチが求められます。定期的な医療機関での経過観察と、医療チームとの緊密な連携により、MASLDの進行を遅らせ、肝機能を保持することが可能となります。生活習慣の改善は、MASLDに対する強力な治療ツールであり、多くの患者にとって病状の改善や回復への道を開く鍵となるのです。
代謝機能障害関連脂肪肝疾患（MASLD）に立ち向かうには、発症予防と長期的な健康管理が欠かせません。MASLDを予防し、健康を維持するために日常生活で心がけるべきポイントは以下の通りです。
適正体重を保つことは、MASLDのリスクを大幅に下げます。肥満は肝臓への脂肪蓄積を助長する主要因の一つですので、健康的な体重管理が予防対策の根幹をなします。バランスの取れた食事と適度な運動を組み合わせることで、理想的な体重の維持を目指しましょう。
体内の脂肪代謝を正常に保ち、肝臓の健康を守るには、バランスの良い食事が不可欠です。野菜や果物、全粒穀物、良質なタンパク質を中心とし、食物繊維が豊富で脂肪分の少ない食事を心がけましょう。加工食品や高脂肪食、高糖質食の摂取は最小限に抑えることが賢明です。
身体を動かす習慣を継続することは、健康体重の維持とインスリン感受性の向上に役立ちます。週に数回、適度な強度の運動を取り入れることで、体脂肪率を下げ、MASLDのリスクを軽減することができるでしょう。
アルコールは肝臓に直接的な負担をかけ、既存の肝障害を悪化させる可能性があります。したがって、飲酒量を控えめにするか、可能であればアルコールを避けることが肝臓の健康維持に有効です。
MASLDは初期段階では無症状のことが多いため、定期的な健康診断が早期発見の鍵を握ります。血液検査や画像検査などを定期的に受けることで、肝機能の状態をモニタリングし、異常があれば早期に治療を開始することができます。
これらの生活習慣の改善は、MASLDのみならず、心血管疾患や糖尿病などの他の生活習慣病のリスクも同時に下げる効果が期待できます。健康的な生活スタイルを実践し続けることで、人生の質を高め、より長く健やかな人生を送ることが可能となるでしょう。自分の健康状態に目を配り、定期健診を活用し、医療専門家とタッグを組んで、MASLDのリスク管理と予防に取り組んでいきましょう。
