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CPAP(持続陽圧呼吸療法)

CPAP(持続陽圧呼吸療法)|つじファミリークリニック|大野城市東大利にある内科・ペインクリニック

CPAPとは

**CPAP(Continuous Positive Airway Pressure、シーパップ)**は、睡眠時に空気を送り込んで気道に陽圧をかけ、喉の奥が塞がらないように保つ治療法です。鼻に装着したマスクから持続的に空気を送り出し、睡眠中の無呼吸発作やいびきを防止します。その結果、低下していた血中酸素飽和度が改善し、睡眠の質が向上、日中の眠気や倦怠感の軽減といった効果が得られます。薬物療法とは異なり、使用を開始したその夜から効果が現れる即効性が大きな特長です(機械によって強制的に気道を確保するため)。

適応される主な疾患

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

副作用・リスク

  • 鼻や口の乾燥・咽頭の渇き
  • 鼻づまり
  • マスクによる皮膚トラブル
  • 腹部の張り(鼓腸)・おなら

CPAPの使用方法と機器・マスクの選び方

CPAP療法の使用方法は、夜間就寝時に専用のCPAP装置本体にホースで接続したマスクを装着し、睡眠中ずっと空気を送り込むというものです。この際、一定の空気圧が気道内に加わり「内部から支柱(添え木)を当てる」ような役割を果たすため、喉の奥の軟部組織による気道閉塞が起こらなくなり、無呼吸やいびきが改善します。装置には通常加温加湿器が備わっており、乾燥対策として温かく湿った空気を送れるよう調節可能です。

使い方自体はスイッチを入れてマスクを付けるだけですが、適切な圧力設定は医師(または技師)が患者ごとの無呼吸の程度に合わせて決定します。近年はオートCPAP(自動調節式CPAP)といって、患者の眠りの状況に応じて装置がリアルタイムに圧力を上下させる機種も広く普及しており、初期導入も比較的簡便になっています。

マスクの種類と選び方

CPAPで使用するマスクは大きく3タイプに分類されます。患者さんの顔の形状や呼吸のクセに合わせて、以下の中から最適なものを選択します。

鼻マスク(ネーザルマスク)

鼻のみを覆う一般的なマスク。クッション部分で鼻を囲むように密閉し、頭部のストラップで固定します。比較的小型で安定感があり、顔の覆われる面積が少なく装着感に優れます。高めの空気圧設定にも耐えやすい利点がありますが、睡眠中に口が開くと空気が漏れてしまうため注意が必要です(鼻マスク使用時に口呼吸になってしまう人には後述のフルフェイス型か、あるいは顎ベルトの併用を検討します)。

ピローマスク(鼻ピロー型)

鼻の穴にシリコン製のクッションを直接差し込んで装着するタイプ。最もマスク部分が小さく軽量で、鼻の下に当たるクッション部がわずかなため肌に触れる面積が最小となります。視界を妨げにくく閉塞感も少ないため快適性が高いマスクです。ただし構造上、高い圧力には向かないため重症で高圧が必要な場合や、慢性的な鼻づまりがある方には適しません。

フルフェイスマスク

鼻と口を同時に覆う大型のマスク。鼻呼吸・口呼吸のどちらにも対応でき、鼻づまりがある方や睡眠中に口が開いてしまう方でも使用可能です。密閉面積が大きいため高い圧力設定でも対応できますが、その反面空気漏れが生じやすい点に注意が必要です(ストラップで強めに固定すると漏れにくくなりますが、その場合は皮膚圧迫に留意します)。

マスク選択は装着感と密閉性のバランスが重要です。一般的には初回導入時に病院や業者が複数のマスクを用意し、実際に試着してみてから決めます。

基本は上記の鼻マスクが第一選択となることが多いですが、顔の形状や鼻詰まりの有無、睡眠中の癖(口呼吸の有無)などによりピロー型やフルフェイス型が選ばれる場合もあります。使用中に不具合や不快感があれば、遠慮なく医師や担当者に相談して別のタイプに交換してもらうことも可能です(保険診療内で一定期間ごとにマスク交換が認められています)。

CPAP治療費用

レンタル費用(保険診療の場合)

自己負担3割 月額 約5,000円前後
  • 装置レンタル代、保守点検・メンテナンス料、使用状況データ解析サービス料、月1回の診察料などが含まれます。
  • 保険適用で治療を続けるには定期的な受診(原則月1回)が必須条件となります。

購入する場合 (通常は保険適用外・自由診療)

本体価格 約15万円~50万円程度
  • 購入後の故障修理やメンテナンス費用も自己負担となります。
  • 自費購入はあまり推奨されません。

軽症で保険適用基準に満たない場合や、何らかの理由で保険を使わずCPAPを希望する場合は、全額自己負担でレンタルまたは購入することも可能です。

CPAP治療の健康保険適用条件と受診の流れ

CPAP治療の健康保険適用条件

保険でCPAP療法が認められるためには、睡眠時無呼吸症候群の確定診断がつき、かつ一定以上の重症度であることが求められます。具体的な基準は次の通りです。

  • 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)でAHI(無呼吸低呼吸指数)が20以上 と判定された場合。
  • 簡易睡眠検査(自宅で行う簡易PSG)で AHIが40以上と判定された場合。

上記いずれかの条件を満たせば健康保険によるCPAP療法の適用が可能です。

受診の流れ

CPAP療法を受けるには、まず睡眠時無呼吸症候群の検査による確定診断が必要です。典型的な流れは以下の通りです。

1

専門外来の受診・問診

いびきや無呼吸、日中の強い眠気などがあり受診すると、専門医による問診・診察が行われます。既往歴や生活習慣の聞き取り、家族から無呼吸を指摘されていないか、眠気の程度(エプワース眠気スケールによる評価等)を確認します。必要に応じて鼻咽頭の構造評価(耳鼻科的診察)や血液検査なども行い、総合的にSASが疑われれば検査へ進みます。

2

簡易検査(スクリーニング検査)

自宅で行う一晩の睡眠モニタリング検査です。自宅にて就寝前に携帯用装置(指先の酸素飽和度センサー、鼻に装着する気流センサーなどが一体化)を装着し、普段どおり一晩眠ります。翌日装置を返却して解析した結果、AHIが40以上の重症SASと判明した場合は、その時点で**「重症の睡眠時無呼吸症候群」と診断され、即座にCPAP治療の適応**となります。一方、AHIが40未満でSASは疑われるが重症かどうか判定が難しい場合や、症状と検査結果が一致しない場合には、次段階として精密検査(PSG)を行います。

3

精密検査(終夜睡眠ポリグラフィー: PSG)

医療施設に一泊して行う本格的な睡眠検査です。脳波・眼球運動・筋電図・心電図・呼吸気流・胸腹部の動き・酸素飽和度など詳細なデータを一晩かけて測定します。PSGの結果に基づき、AHIが5以上であれば睡眠時無呼吸症候群と診断されます(AHI<5は正常範囲)。重症度はAHIで分類され、5以上15未満=軽症、15以上30未満=中等症、30以上=重症です。AHIが20以上の中等症~重症と確定した場合にCPAP療法の保険適用条件が満たされることになります。

※当院では精密検査も自宅内でおこなえます。もちろん医療施設に入院しての検査も可能です(近隣では済生会二日市病院)。

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治療方針の説明・決定

診断結果を踏まえ、担当医から患者へ現在の重症度と推奨される治療法について説明があります。AHIが軽症域の場合は生活習慣の改善(減量・禁酒など)や睡眠体位の工夫、マウスピース療法(下顎前方置換装置)などCPAP以外の治療が提案されることが多いです。一方、中等症以上(AHI≧15)では標準治療としてCPAP療法が強く推奨されます。患者がCPAP治療を希望し同意すれば、ここで医師が診療報酬上の手続きを行い、CPAP導入の準備に入ります。

CPAP治療開始・フォローアップまで

最初の数日はマスクに違和感を覚えたり、機械の存在が気になって眠りづらいかもしれません。しかし、一晩中CPAPを使用すると、多くの場合1~2週間以内には効果を実感し始めるとされています。例えば「朝の目覚めが楽になった」「日中に居眠りしなくなった」等の変化が現れ、治療の手応えを感じられるでしょう。

CPAP療法では定期通院が欠かせません。通常、月に1回の割合で診察を受けに行きます。診察時にはCPAP装置に内蔵されたメモリや通信機能で蓄積された使用データ(使用時間、残存無呼吸の数、マスク漏れの状況など)が確認されます。
医師はそれを基に治療効果を評価し、「無呼吸がしっかり抑えられているか」「日中の症状は改善しているか」「副作用や不便はないか」を尋ねてきます。必要に応じて圧力設定の微調整を行ったり、マスクの交換(形状やサイズ変更)、鼻炎への対処(点鼻薬処方)などが行われます。
また、この場で疑問や不安も相談できますので、治療を続ける上で心配なことがあれば遠慮なく伝えます。

CPAP療法は対症療法であり根本治療ではないため、基本的には継続使用が前提となります。
無呼吸そのものを完全に「治す」には体重減少や外科治療などが必要になるケースもありますが、それには時間やリスクも伴います。そのため、CPAPを使いながら並行して原因へのアプローチ(減量や睡眠衛生の改善など)を図りつつ、現実的には何年にもわたりCPAPを毎晩使い続けることになります。
長期使用中に不具合が出た場合はその都度機器交換や修理対応(レンタル契約に含まれる)を受けられます。定期的に実施される診察では、例えば年1回程度に効果判定のための再検査(CPAP装着下での簡易検査やPSG)を行うこともあります。

最後に

睡眠中の無呼吸は放置すれば高血圧・心疾患・脳卒中など様々な合併症リスクを高め、日常生活にも支障を来たす恐れがあります。
思い当たる症状がある方は早めに医療機関でご相談されることをお勧めします。正しい診断とCPAPなど適切な治療により、質の高い睡眠と健康な生活を取り戻すことが可能です。

参考文献・情報源: 日本睡眠学会・睡眠関連学会のガイドライン、国内医療機関の情報ページ、CPAP機器メーカー(レスメド等)の解説資料などを参照しました。各種数値や条件については上記出典の通りであり、最新の診療報酬・ガイドラインに基づいています。CPAP療法に関する詳細は当院にもご確認ください。