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帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛|つじファミリークリニック|大野城市東大利にある内科・ペインクリニック

疾患の概要

帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹という病気にかかった後に起こることがある持続的な痛みの症状です。帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされ、体の一部に痛みを伴う発疹が出ます。通常は2~4週間で治りますが、時に痛みだけが残ることがあります。この痛みが3ヶ月以上続く場合、帯状疱疹後神経痛と診断されます。

この疾患は、高齢者や重度の帯状疱疹を経験した人に多く見られます。特に60歳以上の人はリスクが高くなります。帯状疱疹後神経痛の痛みは長期間続くことがあり、数ヶ月から数年に及ぶこともあります。痛みの程度や性質は個人差が大きく、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

しかし、様々な治療法があり、症状を軽減することが可能です。医師と相談しながら、個々の状況に合った適切な治療法を見つけることができます。また、帯状疱疹ワクチンの接種により、この疾患のリスクを低減することも可能です。

疾患の原因

帯状疱疹後神経痛の主な原因は、帯状疱疹ウイルスによる神経への損傷です。このウイルスは、水痘(水ぼうそう)を引き起こすものと同じ水痘帯状疱疹ウイルスです。

水痘に罹患した人の体内には、このウイルスが休眠状態で残っています。加齢や免疫力の低下によって、休眠状態のウイルスが再活性化し、帯状疱疹を引き起こします。

帯状疱疹が発症すると、ウイルスは神経に沿って皮膚まで移動し、その過程で神経を損傷させます。この神経損傷により、脳に異常な痛みの信号が送り続けられることがあり、これが帯状疱疹後神経痛の痛みの原因となります。

神経損傷の程度によって、痛みの強さや持続期間が異なります。重度の帯状疱疹に罹患した人や高齢者は、神経損傷のリスクが高く、帯状疱疹後神経痛を発症しやすくなります。

ただし、帯状疱疹に罹患した全ての人が帯状疱疹後神経痛を発症するわけではありません。発症率は約10〜20%程度です。早期に帯状疱疹の治療を行うことで、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを軽減できる可能性があります。

疾患の症状

帯状疱疹後神経痛の主な症状は、帯状疱疹が発症した部位における持続的な痛みです。症状は個人差がありますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。

  • 持続的な痛みズキズキする痛み、焼けるような痛み、刺すような痛みなどがあります。これらの痛みは常に存在する場合もあれば、間欠的に起こる場合もあります。
  • 異常感覚痛みを伴うかゆみを感じることがあります。しかし、掻いても症状は改善せず、むしろ痛みが増す可能性があります。
  • アロディニア通常では痛みを感じない軽い刺激でも痛みを感じる状態です。例えば、衣服が肌に触れるだけで痛みを感じたり、風が当たっただけで痛くなったりすることがあります。
  • 感覚の変化痛みのある部位で、触覚や温度感覚が鈍くなることがあります。

これらの症状は、帯状疱疹が発症した部位に限局して現れます。胸部、背部、顔面など、帯状疱疹の発症部位によって痛みの場所が異なります。

この持続的な痛みにより、不眠、食欲不振、日常生活への支障などが生じることがあります。また、慢性的な痛みによってうつ状態になることもあります。

疾患の治療

帯状疱疹後神経痛の治療は、患者の症状や全身状態に応じて個別化されます。主な治療法には薬物療法、局所療法、注射療法、その他の治療法があり、これらを組み合わせて使用することが一般的です。

1. 薬物療法

抗けいれん薬(ガバペンチノイド)
  • ガバペンチンやプレガバリンが主に使用されます。
  • 神経の過剰な興奮を抑え、痛みの伝達を軽減します。
  • 副作用として眠気やめまいがあることがあります。
三環系(四環系)抗うつ薬
  • アミトリプチリンやノルトリプチリンなどが使用されます。
  • 痛みの伝達を抑制し、睡眠改善効果もあります。
  • 副作用として口の渇きや便秘などがあることがあります。
セロトニン・ノルアドレナリン
再取り込み阻害薬(SNRI)
  • デュロキセチンが使用されることがあります。
  • 痛みの抑制と気分の改善効果があります。
オピオイド鎮痛薬
  • トラマドールなどの弱オピオイドが使用されることがあります。
  • 強オピオイドは依存のリスクがあるため、基本的には使用しません。

2. 局所療法

カプサイシンクリームまたはパッチ
  • トウガラシの成分であるカプサイシンを含む製剤を皮膚に塗布します。
  • 痛みを伝える神経の機能を一時的に低下させます。
  • 初回使用時に熱感や痛みを感じることがありますが、繰り返し使用すると効果が現れます。
リドカインパッチ
  • 局所麻酔薬であるリドカインを含むパッチを貼付します。
  • 皮膚の痛みを和らげる効果があります。
  • 1日最大12時間まで貼付可能です。

3. 注射療法

神経ブロック
  • 痛みを伝える神経の働きを一時的に遮断します。
  • 効果は一時的ですが、即効性があります。
硬膜外ステロイド注射

*当院では仙骨硬膜外ブロックのみおこなっています

  • 脊髄の周囲に抗炎症作用のあるステロイド薬を注射します。
  • 神経の炎症を抑え、痛みを軽減します。
ボツリヌス毒素注射

*日本での保険適応はありません

  • 痛みのある部位にボツリヌス毒素を注射します。
  • 神経の過剰な興奮を抑制し、痛みを軽減する効果が期待されています。
  • 効果は数ヶ月持続しますが、繰り返しの注射が必要です。

4. その他の治療法

経皮的電気神経刺激療法(TENS)
  • 皮膚に電極を貼り、弱い電気刺激を与えます。
  • 痛みの伝達を抑制し、自然な鎮痛物質の分泌を促します。
脊髄刺激療法
  • 脊髄に電極を埋め込み、電気刺激を与えます。
  • 他の治療法で効果が不十分な場合に考慮されます。
認知行動療法
  • 痛みへの対処法や考え方を学びます。
  • 慢性痛による生活への影響を最小限に抑える方法を習得します。

治療効果は個人差が大きいため、一つの治療法で効果が不十分な場合は、別の治療法を試したり、複数の治療法を組み合わせたりします。また、治療効果や副作用を定期的に評価し、必要に応じて治療計画を調整します。

帯状疱疹後神経痛の完治は難しいことがありますが、適切な治療により症状を軽減し、生活の質を改善することが可能です。患者さんは医師と密接に連携し、自身の症状や生活への影響について積極的に相談することが重要です。また、痛みとの付き合い方を学び、ストレス管理や生活習慣の改善など、総合的なアプローチを行うことで、より良い治療効果が期待できます。

以後、気を付けていくこと

帯状疱疹後神経痛と診断された後は、以下の点に注意して生活することが重要です。

  • 定期的な医療機関の受診
    痛みの状態や変化を医師に報告し、治療効果や副作用についても相談しましょう。症状の変化があれば速やかに伝えることが大切です。
  • 健康的な生活習慣の維持
    十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、全体的な健康状態を保つよう努めましょう。ストレス管理も重要です。
  • 日常生活の調整
    痛みが強い時は無理をせず休養をとりますが、可能な範囲で日常活動や仕事を継続することで、精神的な健康を保つことができます。
  • 再発予防
    帯状疱疹ワクチンの接種により、帯状疱疹の再発リスクを低減できる可能性があります。ワクチン接種については医師に相談しましょう。
  • 痛み管理の学習
    慢性痛と付き合うための様々な技術(リラクセーション法、マインドフルネスなど)を学ぶことも有効です。

帯状疱疹後神経痛は長期的な管理が必要な疾患ですが、適切な治療と生活管理により、症状の軽減と生活の質の向上が可能です。医療専門家のサポートを受けながら、前向きに取り組むことが大切です。