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医療コラム

T先生!お酒って認知症の予防になるの?|つじファミリークリニック|大野城市東大利にある内科・ペインクリニック

T先生!お酒って認知症の予防になるの?

(下記の論文を元に一部AIを用いて作成しました)

Topiwala A, Levey DF, Zhou H, Deak JD, Adhikari K, Ebmeier KP, Bell S, Burgess S, Nichols TE, Gaziano M, Stein M, Gelernter J. Alcohol use and risk of dementia in diverse populations: evidence from cohort, case-control and Mendelian randomisation approaches. BMJ Evid Based Med. 2025 Sep 23:bmjebm-2025-113913. doi: 10.1136/bmjebm-2025-113913. Epub ahead of print. PMID: 40987604.

 

📢 T先生!お酒って認知症の予防になるの? 🍶


たろうくん

「T先生!ぼくのおじいちゃんがね、『適度なお酒は体にいいんだ』って言って、毎日少しだけお酒を飲んでるんだ。それって本当なのかな?もしかして認知症の予防になったりする?」

T先生

「おお、たろうくん、いいところに気がついたね!昔から『お酒は百薬の長』なんて言われることもあるけど、アルコールと認知症の関係って、実はずっと議論が続いてきたテーマなんだよ 。そんな中、最近そのナゾに迫る、とても大規模な研究結果が発表されたんだ 。」

たろうくん

「えっ、どんな研究なの?」

T先生

「アメリカとイギリスの2つの大きな研究データを合わせた、合計で約56万人(559,559人)もの大人たちを調べた研究だよ 。平均で4年から12年間、みんながどうなるかを追跡調査したんだ 。」


🧠 昔の常識「少し飲む方がリスクが低い?」

たろうくん

「56万人!すごい数だね。それで、何がわかったの?」

T先生

「まず、これまでの研究でよく言われてきたことと同じ結果が出たんだ。お酒の飲む量と認知症のリスクの関係を見てみると、きれいな『U字型』のカーブになったんだよ 。」

たろうくん

「U字型?」

T先生

「そう。お酒を『まったく飲まない人』や、『すごくたくさん飲む人(例えば週に40杯以上飲む人たち、リスクが1.41倍)』 、それから『アルコール使用障害(AUD)と診断されている人たち(リスクが1.51倍)』 は、認知症になるリスクが高かったんだ。」

たろうくん

「ふむふむ。じゃあ、一番リスクが低かったのは?」

T先生

「それが、**『軽く飲む人たち(週に7杯未満)』**だったんだ 。これだけ見ると、たしかに『適度なお酒は認知症に良いのかも?』 って思っちゃうよね。」


🧬 新しい発見「遺伝子レベルで調べたら…」

T先生

「ところが、この研究のすごいところは、そこからさらに一歩進んで、遺伝子の情報を使った『メンデルランダム化(MR)』っていう方法でも調べたことなんだ 。」

たろうくん

「メンデルランダム…?なにそれ、難しい!」

T先生

「ははは、名前は難しいよね。すごく簡単に言うと、生まれつき『お酒を飲みやすい遺伝子(体質)』を持っている人と『飲みにくい遺伝子(体質)』を持っている人を比べる方法なんだ 11。この方法だと、その人の生活習慣とか、他の病気の影響を受けにくいから、より『本当の原因』に近い関係がわかるんだよ 12。」

たろうくん

「なるほどー。遺伝子で比べるんだね!それで、その結果は?」

T先生

「そしたらね、さっきのU字型とはまったく違う結果が出たんだ。」

たろうくん

「えっ!どう違ったの?」

T先生

「遺伝子レベルで調べると、アルコールの消費量が増えれば増えるほど、認知症のリスクはずーっと上がり続けていたんだよ 。U字型じゃなくて、右肩上がりの直線みたいなグラフだね 。」

たろうくん

「ええーっ!?じゃあ、『少し飲むのが一番良い』っていうのはウソだったの?」

T先生

「この研究では、どんなに少量でも、お酒が認知症を防ぐという証拠(神経保護効果)は見つからなかったんだ 。例えば、遺伝的に週の飲酒量が少し(1SD)増えるだけで、認知症のリスクは15%上がる(OR 1.15) という計算になったよ。」


🕵️ なぜ結果が違うの?「見かけの健康」のワナ

たろうくん

「じゃあ、最初の『U字型』のデータは一体なんだったの?なんで『軽く飲む人』が一番健康に見えたんだろう?」

T先生

「それこそが、この研究が解き明かした一番大事な『カラクリ』かもしれないんだ。その理由は、『逆の因果関係』 にあると考えられているよ。」

たろうくん

「ぎゃくの、いんかかんけい?」

T先生

「うん。つまりね、『お酒を軽く飲むから健康でいられる』んじゃなくて、『認知症が静かに始まって、脳の機能が少し落ちてきたから、お酒の量が減った(またはやめた)』という可能性が高いんだ 。」

たろうくん

「えっ、そっちなの!?」

T先生

「実際に、この研究でも認知症と診断された人たちは、診断される何年も前から、だんだんとお酒を飲む量が減っていく傾向がはっきりと確認されたんだ 。特に、もともとたくさん飲んでいた人ほど、その減り方が大きかったんだよ 。」

たろうくん

「なるほどー!元気だから飲めるけど、調子が悪くなってきたから飲まなくなる…。その結果、『飲まない人』や『飲む量が減った人』に、これから認知症になる人が多く含まれちゃって、見かけ上『軽く飲み続けている人』が一番健康に見えちゃってたんだね! 」

T先生

「その通り!たろうくん、理解が早いなあ。それに『飲まない人』グループには、昔たくさん飲んでいて病気でやめた人(‘sick quitters’) も混ざっているから 、単純に比べちゃいけなかったんだね 。」


📝 まとめ!

T先生

「というわけで、この最新の研究からわかったことをまとめるよ。」

✅ これまでの研究で「適度な飲酒は認知症リスクを下げる」ように見えていた(U字型) 。

✅ でもそれは、認知症の初期症状(認知機能の低下)によってお酒を飲まなくなる「逆の因果関係」が原因だった可能性が高い 。

✅ 遺伝子レベルで調べた(メンデルランダム化)結果では、お酒は飲む量が増えるほど認知症リスクを一貫して上げていた 。

✅ 結論として、どんなに少量でも、アルコールが認知症を予防する(神経保護)という証拠は見つからなかった 。

✅ もし社会全体でアルコール使用障害(AUD)を半分に減らせたら、認知症の数を最大16%も減らせるかもしれない 。


たろうくん

「そっかぁ…。『適度なお酒は体にいい』って、単純には言えないんだね 。おじいちゃんにも、この研究のこと、優しく教えてあげようっと。ありがとう、T先生!」 😊

T先生

「どういたしまして。お酒とどう付き合っていくか、家族で話してみる良いきっかけになるといいね !」


meta-description

「適度な飲酒は認知症予防になる」は本当?最新の大規模研究で「逆の因果関係」が判明。遺伝子解析(MR)が示すアルコールと認知症の真の関係性をT先生が小学生にも分かりやすく解説します。