T先生!指の関節がポキポキ鳴るのはなんで?体に悪いの?
- 2025年6月6日
- 2025年6月7日(更新)
- 教えて!T先生,よくある症状とお悩み,整形外科
たろうくん 「T先生!ぼく、指をグッと曲げると『ポキッ』って音が鳴るんだけど、これって大丈夫なの?友達は『骨が折れちゃうよ』って言うんだけど…」
T先生 「あはは、心配になるよね!でも安心して。実は関節が鳴る仕組みはちゃんと科学的に説明できるんだよ。骨が折れているわけじゃないから大丈夫!」
たろうくん 「本当?じゃあ、あの音は何の音なの?」
関節が鳴る仕組みって?
T先生 「関節の中には関節液(かんせつえき)っていう、ヌルヌルした液体が入っているんだ。これは関節をスムーズに動かすための潤滑油みたいなものだよ。」
たろうくん 「へぇ〜、油みたいなのが入ってるんだ!」
T先生 「そう!その関節液の中には窒素や酸素、二酸化炭素などの気体が溶け込んでいるんだ。指を急に引っ張ったり曲げたりすると、関節の隙間が一瞬広がって、気圧が下がるんだよ。」
たろうくん 「気圧が下がる?どういうこと?」
T先生 「炭酸ジュースの缶を開けたときのことを思い出してごらん。プシュッて音がして泡が出てくるでしょ?あれと同じようなことが関節の中で起きているんだ。気圧が下がると、液体に溶けていた気体が小さな泡(気泡)になって、その泡ができるときに『ポキッ』って音が鳴るんだよ。」
たろうくん 「なるほど!泡ができる音だったんだ!でも、なんで一回鳴ったらしばらく鳴らないの?」
⏰ なぜすぐには鳴らないの?
T先生 「いい質問だね!一度関節を鳴らすと、約20分間は同じ関節を鳴らすことができないんだ。」
たろうくん 「20分も!なんで?」
T先生 「さっき出てきた気泡が、もう一度関節液に溶け込むまでに時間がかかるからなんだ。研究によると、平均して20分かかることが分かっているよ。」
たろうくん 「へぇ〜、泡が消えるまで待たないといけないんだね!」
体に悪いの?良いの?
T先生 「さて、一番気になるのは『体に悪いのか』ってことだよね。実は、アメリカのドナルド・アンガー先生という医師が、すごい実験をしたんだ。」
たろうくん 「どんな実験?」
T先生 「アンガー先生は、なんと50年以上も左手だけ指を鳴らし続けて、右手は全く鳴らさなかったんだ。毎日少なくとも2回は左手の指を鳴らしていたから、計算すると36,500回以上も鳴らしたことになるね!」
たろうくん 「えー!50年も!?すごい根気だね。で、どうなったの?」
T先生 「結果はね、左手も右手も関節炎にはならなかったんだよ。この研究で、アンガー先生は2009年にイグノーベル賞という面白い研究に贈られる賞をもらったんだ。」
たろうくん 「よかった〜!じゃあ、安心して鳴らしていいの?」
T先生 「ちょっと待って。他にも2011年に行われた研究があってね、215人の人を調べたら、指を鳴らす習慣がある人もない人も、関節炎になる割合は同じだったんだ。つまり、指を鳴らしても関節炎にはならないってことが分かったんだよ。」
⚠️ 気をつけたいポイント
T先生 「でも、いくつか注意点があるんだ。わざと強い力で関節を鳴らし続けると、関節の周りの靭帯(じんたい)っていう組織が伸びてしまうことがあるんだ。」
たろうくん 「靭帯って何?」
T先生 「靭帯は、骨と骨をつないでいる丈夫なゴムバンドみたいなものだよ。これが伸びすぎると、関節が不安定になって、将来的に怪我をしやすくなる可能性があるんだ。」
たろうくん 「なるほど…じゃあ、どんなときは注意したほうがいいの?」
T先生 「こんなときは要注意だよ:
- 痛みがあるのに無理やり鳴らす
- 1日に何十回も同じ関節を鳴らす
- 関節が腫れているとき
- 鳴らした後に痛みが続く」
T先生 「あと、1990年の研究では、習慣的に指を鳴らしている人は握力が少し弱くなる可能性があることも分かったんだ。でも、2017年の別の研究では握力に差はなかったという結果もあって、まだはっきりとは分かっていないんだよ。」
関節が勝手に鳴ることもある?
たろうくん 「そういえば、階段を上るときに膝がポキポキ鳴ることがあるんだけど、これも同じ?」
T先生 「それはちょっと違うかもしれないね。関節が勝手に鳴る場合は、腱(けん)っていう筋肉と骨をつなぐ組織が、骨の出っ張りを乗り越えるときに鳴ることがあるんだ。これを弾発現象(だんぱつげんしょう)って言うよ。」
たろうくん 「へぇ〜、いろんな鳴り方があるんだね!」
T先生 「そうなんだ。スポーツ選手やダンサーに多いスナッピングヒップ症候群っていう状態もあって、股関節の腱が骨の上を滑るときに音が鳴ることもあるよ。年齢とともに軟骨がすり減ってきて音が鳴ることもあるけど、たろうくんの年齢なら心配ないよ。ただし、痛みがある場合は、お医者さんに診てもらったほうがいいね。」
関節を健康に保つには?
たろうくん 「関節を健康に保つために、何かできることはある?」
T先生 「いい心がけだね!関節を健康に保つためには:
- 適度な運動をする(1日30分以上)
- カルシウムをしっかり摂る(牛乳、チーズ、小魚など)
- ビタミンDも大切(日光浴で作られるよ)
- 正しい姿勢を心がける
- 体重を適正に保つ」
たろうくん 「なるほど!運動と食事が大事なんだね!」
まとめ!
✅ 関節が鳴るのは、関節液の中の気泡ができる音で、危険ではない!
✅ 一度鳴らすと約20分間は同じ関節を鳴らせない!
✅ 50年以上の研究や多くの人を対象にした研究で、関節を鳴らしても関節炎にはならないことが証明された!
✅ ただし、強い力で無理やり鳴らし続けると、靭帯が伸びて関節が不安定になる可能性がある!
✅ 習慣的に鳴らしすぎると握力が弱くなる可能性もある!
✅ 痛みがあるときや、鳴らした後に痛みが続く場合は、お医者さんに相談しよう!
たろうくん 「よく分かった!関節が鳴るのは泡ができる音で、基本的には心配ないんだね。でも、無理やり鳴らしすぎないように気をつけるよ!」
T先生 「その通り!自然に鳴る分には問題ないけど、わざと強く鳴らすのはほどほどにね。それより、運動して関節を丈夫に保つことのほうが大切だよ!」
たろうくん 「うん!今日から関節に優しい生活を心がけるね。ありがとう、T先生!」
参考文献
https://www.healthline.com/health/cracking-knuckles