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医療コラム

T先生!帯状疱疹ワクチンが認知症の予防や進行を遅らせるって本当?|つじファミリークリニック|大野城市東大利にある内科・ペインクリニック

T先生!帯状疱疹ワクチンが認知症の予防や進行を遅らせるって本当?

(下記の論文を元に一部AIを用いて作成しました)

Xie M, Eyting M, Bommer C, Ahmed H, Geldsetzer P. The effect of shingles vaccination at different stages of the dementia disease course. Cell. 2025 Dec 11;188(25):7049-7064.e20. doi: 10.1016/j.cell.2025.11.007. Epub 2025 Dec 2. PMID: 41338191.

 

📢 T先生!帯状疱疹ワクチンが認知症の予防や進行を遅らせるって本当? 🧠💉


たろうくん
「T先生!帯状疱疹のワクチンが認知症にも効くかもしれないって聞いたんだけど、本当なの?」

T先生
「すごくいい質問だね!2025年12月に権威ある科学雑誌『Cell』に発表された研究で、帯状疱疹ワクチンが認知症の予防だけじゃなくて、すでに認知症になった人の病気の進行を遅らせる可能性があることが分かったんだよ。」

たろうくん
「えっ!予防だけじゃなくて、もう認知症になっちゃった人にも効果があるの?それってすごいね!」


🔬 どうやって調べたの?「自然実験」の巧妙な仕組み

T先生
「この研究のすごいところは、**『自然実験』**という方法を使ってることなんだ。」

たろうくん
「自然実験?それってどういうこと?」

T先生
「ウェールズでは2013年9月1日から帯状疱疹ワクチンのプログラムが始まったんだけど、1933年9月2日以降に生まれた人は1年間ワクチンを受けられて、それより前に生まれた人は一生受けられないっていう独特なルールがあったんだ。」

たろうくん
「へぇ〜、たった1日の違いで受けられるかどうかが決まっちゃったんだ!」

T先生
「そうなんだ。このわずか数日の誕生日の差で分かれた2つのグループは、年齢以外のほぼすべての条件が同じなんだよ。だから、ワクチンの効果だけを純粋に調べることができるんだ。普通の研究だと『ワクチンを受ける人は健康意識が高くて運動や食事も気をつけてる』っていうバイアスがあるけど、この研究ではそれがほとんど無いんだよ。」


🧠 軽度認知障害(MCI)への効果

T先生
「まず、認知症の前段階である**軽度認知障害(MCI)**への効果から見ていこう。」

たろうくん
「MCIって、認知症になる一歩手前の状態だよね?」

T先生
「その通り!この研究では、最初は認知機能が正常だった約28万人を9年間追跡したんだ。その結果、ワクチン接種の資格があった人たちは、MCIになるリスクが1.5ポイント低かったんだよ。」

たろうくん
「1.5ポイントってどのくらいすごいの?」

T先生
「分かりやすく言うと、実際にワクチンを受けた人で計算し直すと3.1ポイントの保護効果があったんだ。つまり、ワクチンを受けてない人100人のうち10人がMCIになるとしたら、ワクチンを受けた人では7人で済む計算になるよ。」

たろうくん
「おお!100人中3人も減るんだ!それは大きいね!」


💊 認知症による死亡への驚くべき効果

T先生
「さらに驚きなのが、すでに認知症と診断されている人への効果なんだ。」

たろうくん
「もう認知症になっちゃった人にも効果があるの?」

T先生
「うん!この研究では、プログラム開始時にすでに認知症だった約14,350人も追跡したんだけど、9年間で約半分の人が認知症が原因で亡くなったんだ。でも、ワクチンを受けた人たちは、認知症で亡くなるリスクが29.5ポイントも低かったんだよ。」

たろうくん
「29.5ポイント!?それってすごく大きい数字だね!」

T先生
「そうなんだ。簡単に言うと、ワクチンを受けてない人の約半分が認知症で亡くなったのに対して、ワクチンを受けた人では約30%だけだったんだ。これは、ワクチンが認知症の進行を遅らせている可能性を強く示唆してるんだよ。」

たろうくん
「すごい!予防だけじゃなくて、治療的な効果もあるかもしれないってことだね!」


📊 以前の研究結果も含めて:認知症診断そのものへの効果

T先生
「この研究チームは以前にも別の研究を発表していて、そこでは7年間の追跡で認知症の診断を受けるリスクが20%低下することが分かってたんだ。」

たろうくん
「20%も!じゃあ、認知症になる前の段階から、認知症になった後まで、ずっと効果がある可能性があるんだね!」

T先生
「まさにその通り!研究者たちは『このワクチンは認知症の病気の経過全体にわたって効果があるようだ』と言ってるんだ。ちなみに、元々の目的である帯状疱疹の予防効果は37%の減少だったから、それと同時に認知症への効果も得られるかもしれないんだね。」


🦠 なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症に効くの?

たろうくん
「でも不思議だよね。帯状疱疹のワクチンがなんで認知症に効くの?」

T先生
「いい質問だね!実はまだ完全には分かってないんだけど、いくつかの仮説があるんだ。」

たろうくん
「どんな仮説があるの?」

T先生
「まず1つ目は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)と慢性炎症の関係だよ。子どもの頃に水ぼうそうにかかると、このウイルスは治った後も神経系の中で一生眠ったままなんだ。」

たろうくん
「ずっと体の中にいるんだ!」

T先生
「そう。そして、このウイルスが神経系に潜んでいると、眠っている間も免疫系と常に相互作用して、神経系に慢性的な炎症を引き起こすことが分かってきたんだ。この炎症が認知症の発症や進行に関係している可能性があるんだよ。」

たろうくん
「じゃあ、ワクチンでウイルスの再活性化を抑えれば、炎症も減って認知症も予防できるかもってこと?」

T先生
「その通り!さらに最近の研究では、VZVがアミロイドβやタウタンパク質の蓄積とも関係していて、脳血管の障害も引き起こす可能性が指摘されてるんだ。これらはアルツハイマー病でよく見られる変化なんだよ。」


🔄 もう1つの仮説:他のウイルスの再活性化

T先生
「2つ目の仮説も興味深いんだ。帯状疱疹(VZVの再活性化)が起きると、それが刺激になって**別のヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)**を脳内で再活性化させる可能性があるんだ。」

たろうくん
「HSV-1?それって口唇ヘルペスを起こすウイルスだよね?」

T先生
「よく知ってるね!HSV-1はアルツハイマー病との関連が強く疑われているウイルスなんだ。だから、帯状疱疹ワクチンでVZVの再活性化を防げば、連鎖的にHSV-1の再活性化も防げて、結果的に認知症のリスクが下がるかもしれないんだよ。」

たろうくん
「なるほど!1つのワクチンで、いろんなウイルスの悪さを防げるかもしれないんだね!」


💪 免疫系全体の強化という可能性

T先生
「3つ目の仮説は、ワクチンが免疫系全体を強化するというものだよ。」

たろうくん
「免疫系全体?特定のウイルスだけじゃなくて?」

T先生
「そうなんだ。ワクチンを打つことで免疫系が活性化されて、いろんな感染症に対する抵抗力が高まる可能性があるんだ。そして、様々な感染症が認知症のリスクを上げることが分かってきてるから、全体的に感染症に強くなれば、認知症のリスクも下がるかもしれないってわけだね。」


👩 女性でより顕著な効果

T先生
「ちなみに、この研究では女性の方が効果が大きいという傾向も見られたんだよ。」

たろうくん
「女性の方が?どうしてなの?」

T先生
「まだはっきりとは分かってないけど、免疫系の性差が関係しているかもしれないんだ。女性と男性では免疫系の働き方に違いがあることが知られていて、ワクチンの効果にも影響する可能性があるんだよ。ただ、男性でも効果がないわけじゃなくて、統計的な検出力の問題かもしれないから、今後の研究が必要だね。」


⚠️ 研究の限界と今後の課題

たろうくん
「じゃあ、今すぐみんな帯状疱疹ワクチンを打てば認知症が防げるんだね!」

T先生
「気持ちは分かるけど、ちょっと待って!この研究はとても優れた**『自然実験』だけど、まだ完全な証明ではない**んだよ。」

たろうくん
「えっ、そうなの?」

T先生
「うん。この研究で使われたのは**生ワクチン(弱毒化ワクチン)なんだけど、現在多くの国で使われているのは不活化ワクチン(組換えワクチン)**なんだ。生ワクチンと不活化ワクチンでは、免疫系への刺激の仕方が違うから、同じ効果があるかどうかはまだ分からないんだよ。」

たろうくん
「なるほど…じゃあ、次はどんな研究が必要なの?」

T先生
「理想的には、**無作為化比較試験(RCT)**という、くじ引きでワクチンを打つグループと打たないグループに分けて比較する研究が必要なんだ。でも、認知症の発症までには何年もかかるから、とても大規模で長期間の研究になるね。」


📝 まとめ!

帯状疱疹ワクチン(生ワクチン)は、軽度認知障害のリスクを約3ポイント減らす可能性がある!(100人中10人→7人)
7年間の追跡で、認知症診断を受けるリスクが20%低下することが以前の研究で示されている!
すでに認知症の人では、認知症による死亡リスクが29.5ポイントも低下し、病気の進行を遅らせる可能性がある!
効果の仕組みは、ウイルスによる慢性炎症の抑制、他のヘルペスウイルスの再活性化防止、免疫系全体の強化などが考えられている!
『自然実験』という優れた研究手法で偏りを最小限にしているが、現在主流の不活化ワクチンでも同じ効果があるかは今後の研究が必要!


たろうくん
「すごく興味深い研究だね!でも、まだ完全には証明されてないから、『帯状疱疹予防として接種する中で、もしかしたら認知症予防効果もあるかもしれない』くらいに考えておくのがいいのかな?」

T先生
「その理解は完璧だよ、たろうくん!帯状疱疹は高齢者にとってとても辛い病気だから、帯状疱疹予防そのものが大きなメリットなんだ。そして、もし認知症への効果も本当にあれば、それは素晴らしいボーナスになるよね。今後の研究で、この発見がどこまで確実になるか、とても楽しみだね!」

たろうくん
「ワクチンって、元々の目的以外にもいろんな良い効果があるかもしれないんだね。科学の進歩ってワクワクする!ありがとう、T先生!」 😊