T先生!大腸がんの原因が、おなかの中の菌だったって本当?
📢 T先生!大腸がんの原因が、おなかの中の菌だったって本当? 🏥
(下記の論文を元に一部AIを用いて作成しました)
Shiba S, Yachida S, et al. Prevalence and chronology of colibactin-associated mutational processes and their microbiome spectra in Japanese colorectal cancer. Nature Genetics. 2026. doi:10.1038/s41588-026-02692-x / PubMed
プレスリリース: 大阪大学大学院医学系研究科(2026年8月10日) / 東京大学医科学研究所(同日)
✅ この記事のまとめ
日本人の大腸がん200例の全ゲノムを解析したところ、大腸菌の一部が作る毒素「コリバクチン」がDNAを傷つけた痕跡が44.8%に見つかりました(変異が極端に多い特殊なタイプを除いた患者さんの中での割合)。40歳未満で発症した人では約70%でした。
ただし今のところ、この菌を調べる検査も、除菌する治療もありません。
今日できることは変わらず、40歳から便潜血検査を毎年受けることです。
たろうくん
「T先生!ニュースで『大腸がんの原因は腸内細菌だった』って言ってたよ。菌でがんになっちゃうの?」
T先生
「8月10日に発表されたばかりの研究だね。大阪大学と東京大学のチームが、日本人の大腸がん200例の遺伝子をまるごと読んだんだ。ちょっと驚く結果でね。」
たろうくん
「大腸がんって、食べすぎとかお酒とかが原因じゃなかったの?」
T先生
「それも関係する。でも今回わかったのは、もう一枚下にある層なんだよ。」
🧬 DNAに残った「傷の型」を読む
T先生
「大腸にいる大腸菌のうち、一部の株がコリバクチンという毒素を作るんだ。この毒素は腸の細胞のDNAを直接傷つける。」
たろうくん
「うわ、こわい……」
T先生
「ここからが面白いところでね。毒素ごとに、つける傷の形が決まっているんだ。だから、がんになった細胞の遺伝子をぜんぶ読むと、どの毒素が傷をつけたのかを後から言い当てられる。犯行現場に残った指紋みたいなものだね。」
たろうくん
「それで、日本人の大腸がんを調べたら……?」
📌 200例の全ゲノム解析でわかったこと
・コリバクチンの傷跡があった人 … 44.8%(変異が極端に多い特殊なタイプを除いた中での割合)
・40歳未満で発症した人にしぼると … 約70%
・1965年以降に生まれた世代で、この傷跡が多かった
たろうくん
「40歳より若い人だと7割!? 多すぎるよ!」
T先生
「そこは落ち着いて読んでほしいところでね。そもそも40歳未満で大腸がんになる人は、とても少ないんだ。この『7割』は、その少ない人たちの中での割合。若い人の7割が危ない、という意味ではないよ。」
たろうくん
「あ、そういうことか。」
T先生
「うん。『若い人の大腸がんは、この菌が関わっているものが多い』——そう読むのが正しい。」
⏰ 傷がついたのは、子どものころかもしれない
T先生
「しかもね、この傷はがんになる過程のいちばん最初の段階でついていたとみられるんだ。研究チームは、10歳未満の子どものころにはもう生じていた可能性まで指摘している。」
たろうくん
「え、そんな昔!?」
T先生
「うん。大人になってからの食生活だけでは説明がつかない、ということだね。若い世代に大腸がんが増えていることと関係があるかもしれない——ただ、そこはまだ確かめられていないよ。」
T先生
「傷跡はAPC・BRAF・TP53という、大腸がんの引き金になる遺伝子そのものにも見つかった。たまたま近くにいた菌ではなく、引き金を引く側にいたということだね。」
🤔 じゃあ、検査して除菌すればいいの?
たろうくん
「その菌がいるかどうか、調べてもらえるの?」
T先生
「それが、今はできないんだ。」
たろうくん
「えっ!」
T先生
「この菌は便の中では量が少なくて、今の便検査のやり方では見つけにくい。研究チーム自身がそう書いている。病院で受けられる検査も、除菌の方法も、まだ存在しないんだよ。」
T先生
「胃がんとピロリ菌のときも、原因がわかってから検査と除菌が普及するまで何年もかかった。今回はその入口に立ったところだね。将来は便の検査で発症リスクを見たり、原因菌を減らしたりできるかもしれない——研究チームもそこを目指すと言っている。」
たろうくん
「じゃあ今は、何にもできないの……?」
🎯 今日できることは、実はもう決まっている
T先生
「そんなことはないよ。大腸がんは、日本でいちばん多く見つかるがんでね。2023年に新しく診断された人は154,039人、2024年に亡くなった方は54,416人なんだ。」
たろうくん
「いちばん多いんだ……」
T先生
「でもね、早く見つかれば治せる。だから国は40歳から、1年に1度の便潜血検査をすすめている。便を採るだけの、痛くない検査だよ。」
📌 便潜血検査、2日分から1日分になる見込みです
今の国の指針では2日分の便を採ります(2回法)。
ただし2026年3月の厚生労働省の検討会で、1回法へ変更する方向が示されました。指針の改正を経て、2027年度から1日分になる見込みです。
検査そのものが変わるわけではなく、出す手間が減るだけ。お住まいの自治体の案内に従ってください。
📌 年齢に関係なく、受診したほうがいい症状
・血便が出た(痔だと思って様子を見ない)
・便が細くなった、便秘と下痢を繰り返す
・健診で貧血を指摘された
T先生
「原因が何であっても、この2つは変わらない。むしろ今回の研究は、『若ければ絶対に関係ない』とは言えないことを示しているんだ。」
📝 まとめ!
✅ 日本人の大腸がんの44.8%に、腸内細菌の毒素の傷跡があった
200例の全ゲノム解析の結果です。変異が極端に多い特殊なタイプを除いた患者さんの中での割合です。
✅ 40歳未満の発症では約70%、1965年以降生まれで多かった
傷はがんになる最初期にでき、10歳未満の子どものころに生じていた可能性が指摘されています。ただし40歳未満の大腸がん自体がまれで、これは「その中での割合」です。
✅ ただし「原因が証明された」とまでは言えない
残された痕跡を読み解いた研究です。この菌が大腸がんを起こすことを、人で直接確かめた研究ではありません。
✅ 今は検査も除菌もできない
菌は便の中では量が少なく、今の便検査のやり方では見つけにくいためです。将来の予防法の入口が見えた段階です。
✅ 今日できるのは、40歳からの便潜血検査を毎年受けること
採便は今は2日分で、1日分へ変更する方向が示されています(2027年度からの見込み)。血便・便が細い・貧血の指摘があれば、年齢に関係なく受診してください。
たろうくん
「原因がわかったのに、まだできることは増えないんだね。」 😊
T先生
「うん。でもね、わかっていないことを『わかった』と言わないのが医療の作法なんだ。気になることがあったら、いつでも聞いてね。」
📚 参考文献
Shiba S, Yachida S, et al. Prevalence and chronology of colibactin-associated mutational processes and their microbiome spectra in Japanese colorectal cancer. Nature Genetics. 2026. doi:10.1038/s41588-026-02692-x(PMID: 42576026)
大阪大学大学院医学系研究科 プレスリリース「日本人大腸がんの主要な原因は”腸内細菌”だった」2026年8月10日
東京大学医科学研究所 プレスリリース(同日)
国立がん研究センター がん統計「最新がん統計」「大腸」
国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
厚生労働省「第46回がん検診のあり方に関する検討会 資料1 大腸がん検診について」令和8年3月23日
