T先生!血圧の薬を飲んでいると、熱中症になりやすいって本当?
- 2026年8月1日
- 教えて!T先生,女性の健康,男性の健康,高齢者の健康,エイジング・ケア、予防医学
📢 T先生!血圧の薬を飲んでいると、熱中症になりやすいって本当? 🏥
(下記の資料を元に一部AIを用いて作成しました)
出典: 一般社団法人日本救急医学会 「熱中症診療ガイドライン2024」 BQ2-01(2024年7月25日公開)/ ガイドライン全文PDF / 総務省消防庁 熱中症情報(2026年7月20日〜26日の全国搬送人員)
※ 記事中の「薬が汗を出しにくくする仕組み」と「受診の目安」は、上記ガイドラインには記載がなく、一般的な薬理・診療の考え方として補足したものです(参考:MSDマニュアル プロフェッショナル版「熱射病」/日経メディカル「脱水に留意すべき疾患と薬」)。
✅ この記事のまとめ
降圧薬・利尿薬・向精神薬などは、熱中症や脱水での入院が増えることが報告されています。抗ヒスタミン薬(市販の鼻炎薬・眠くなる風邪薬)やアルコールも、「リスクになりうるもの」として名前が挙がっています。
ただしガイドラインは「薬をやめる」ことは勧めておらず、注意して見守るべき人を見分けるための材料という位置づけです。
自己判断で中断せず、夏の間は主治医に一言相談してください。
たろうくん
「T先生!おばあちゃんが『血圧の薬を飲んでると熱中症になりやすいらしい』って聞いてきて、勝手に薬を1回飛ばしちゃったんだって。それって本当なの?」
T先生
「おっと、それは今すぐ止めてあげてほしいな。“なりやすい”のは本当。でも”だから薬をやめる”は間違いなんだ。ここ、いちばん誤解されやすいところだから、今日はていねいに話すね。」
たろうくん
「えっ、本当なの!?」
T先生
「日本救急医学会が出している『熱中症診療ガイドライン2024』という、お医者さん向けの公式な手引きがあってね。そこには熱中症になりやすい条件が13個、はっきり並べて書いてあるんだよ。」
🌡️ 熱中症は「暑さ」だけで決まらない
📌 ガイドラインが挙げる13のリスク(BQ2-01)
1. 高齢者 2. 施設入所・要介護・独居 3. 小児 4. スポーツ選手
5. 労働者(農林・土木・製造業などの肉体労働) 6. エアコンの未使用者・非設置者
7. 心疾患 8. 悪性腫瘍 9. 精神疾患 10. 糖尿病
11. 降圧薬 12. 利尿薬 13. 向精神薬
たろうくん
「うわ、本当に薬が入ってる…!」
T先生
「そうなんだ。ガイドラインには『熱中症の発症には気象条件だけでなく、患者因子も重要である』と書かれている。“炎天下で長時間”だけが熱中症じゃない——ここが出発点だよ。」
たろうくん
「うちのおばあちゃん、①高齢者で⑪血圧の薬で…3つくらい当てはまってるかも。」
T先生
「実はね、そこが大事なところで。高齢の方は”重なりやすい”んだ。ガイドラインは高齢がリスクになる理由を3つ挙げているよ。①年齢とともに体温を調節する力が落ちる。②暑いときに水を飲むなどの行動がとりにくい。③そもそも”暑い場所にいる”と気づけない。そのうえで『基礎疾患や薬剤などのリスク因子も高齢者には併存している』と説明しているんだ。体・気づき・薬の三重取りなんだよ。」
💊 どんな薬が名前を挙げられているの?
🥇 熱中症・脱水での入院が増えたと報告された薬(オーストラリアの退役軍人データベース研究)
・ACE阻害薬/ARB(血圧の薬) ・利尿薬 ・β遮断薬
・NSAIDs(痛み止め) ・抗凝固薬 ・硝酸薬
・抗精神病薬 ・SSRI・抗うつ薬
🥈 熱中症での入院が増えたと報告された薬(フランスの、1施設だけを対象にした小規模な救急外来の研究)
・抗うつ薬 ・抗てんかん薬 ・抗精神病薬
・抗コリン薬 ・コリンエステラーゼ阻害薬
🔹 その他、リスクになりうるもの
・アルコール ・α作動薬 ・抗ヒスタミン薬(鼻炎薬・かゆみ止め・眠くなる風邪薬)
・リチウム製剤 ・甲状腺治療薬
たろうくん
「えっ、風邪薬とか鼻炎の薬まで!?」
T先生
「うん。汗をかく力や体温を調節する仕組みに関わる薬が多いんだ。血圧の薬や利尿薬は体の水分・血圧に効くし、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬は汗を出しにくくすることがある——これはガイドラインの外の、一般的な薬の性質の話だけどね。“薬を飲んでいる自覚がない市販薬”も同じ土俵にいる、というのは知っておいてほしいな。」
⚖️ でもね、ここがいちばん大事なところ
T先生
「ここからが今日の本題だよ。このガイドライン、実は『こうしましょう』という推奨を出せていないんだ。」
たろうくん
「えっ、どうして?」
T先生
「調べ方が厳密だからだよ。世界中の研究を探したけれど、この問いに答えられる質の高い試験(RCT)は1件もなかった——ガイドラインには『採用された文献は0件であった』とはっきり書かれている。だから“推奨を出す問い(CQ)”から”情報を示すだけの問い(BQ)”に変更されたんだ。」
たろうくん
「じゃあ、さっきの薬のリストは間違いなの?」
T先生
「いや、間違いじゃない。“観察して見つかった関連”なんだ。薬を飲み始めたあとに熱中症や脱水で入院した人が多かった、という事実はある。でも“その薬を出すことになった体調の変化”のほうが本当の原因かもしれない。薬のせいなのか、薬が必要になった体の状態のせいなのかを、この種の研究では切り分けられないんだよ。」
T先生
「だからガイドラインの結論はこう書かれている。『これらのリスクを個々に評価するのは困難と考えられ、気象条件とともに総合的に判断するための補助的な位置づけと考える』——つまり“この薬は危ない”ではなく、”この夏、特に気をつけて見るべき人を見分けるための材料”なんだ。」
たろうくん
「なるほど…!犯人探しじゃなくて、見張るリストなんだね。」
T先生
「うまい言い方だね、その通り。そして自己判断で薬をやめるのは、いちばんやってはいけないこと。1回飛ばしただけですぐ倒れるわけではないけれど、飲まない状態が続けば血圧が上がったままになり、脳卒中や心不全という別の大きな危険が近づいてくる。熱中症を避けようとして、もっと重い病気を呼び込んでしまうんだ。」
🏠 もうひとつ、外せない話——エアコン
T先生
「13のリスクの6番目、『エアコンの未使用者・非設置者』を覚えている?ガイドラインは海外の報告として、エアコンを使わないこと、ひとり暮らし、低い収入などが、熱波のときの死亡率の上昇と関係していたと紹介しているんだ。」
たろうくん
「薬より、そっちの方がこわいかも…。」
T先生
「正直に言うとね、外来から見ていていちばん心配なのは”ひとり暮らしで、エアコンをつけない高齢の方”なんだ。ただしこれは海外の研究で、ガイドライン自身も『日本とは社会情勢が異なるため外的妥当性は懸念される』と正直に注記している。数字をそのまま日本に当てはめることはできない。それでも“声をかけに行く価値がある”という意味では、十分に役に立つ情報だと思うよ。」
たろうくん
「今年はどれくらい運ばれてるの?」
T先生
「消防庁の発表では、2026年7月20日〜26日の1週間だけで、全国18,591人が熱中症で救急搬送されている(速報値)。8月はここからが本番だからね。」
📝 まとめ!
✅ 「なりやすい」は本当、「やめるべき」は誤り
降圧薬・利尿薬・向精神薬はガイドラインの13のリスクに名前が挙がっているが、それは”見張るべき人”の目印であって、中止の理由ではない。
✅ 名前が挙がった薬は幅広い
入院が増えたと報告されたのはACE阻害薬/ARB・利尿薬・β遮断薬・NSAIDs・抗うつ薬・抗コリン薬など。さらに市販の鼻炎薬や眠くなる風邪薬(抗ヒスタミン薬)、そしてアルコールも、”リスクになりうるもの”として名前が挙がっている。
✅ エビデンスには限界がある
この項目には質の高い試験(RCT)が0件で、根拠は観察研究のみ。だからガイドラインは推奨を出さず「総合的に判断するための補助的な位置づけ」としている。
✅ 薬より効くのは、エアコンと声かけ
エアコンを使わないこと・ひとり暮らしは、熱波での死亡率上昇と関連が報告されている。離れて暮らす家族は「エアコンつけてる?」の電話1本から。
✅ 受診の目安(※ガイドライン外・一般的な診療の考え方として)
食欲が落ちて食事量が減った/下痢が続く/数日で体重が落ちた——このときは薬の量の調整が必要なサインです。自己判断で中断せず、当院にご相談ください。
たろうくん
「わかった!おばあちゃんに『薬は飲んで、エアコンつけて』って伝えてくる!」 😊
T先生
「それが今日いちばんの正解だよ。心配なことがあれば、いつでも一緒に確認しよう。」
📚 参考資料
・一般社団法人日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」BQ2-01(2024年7月25日公開)
・総務省消防庁「熱中症情報」週別の救急搬送状況(2026年7月20日〜26日・速報値)
・MSDマニュアル プロフェッショナル版「熱射病」/日経メディカル「脱水に留意すべき疾患と薬」(※本文中の補足部分の参考)
