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医療コラム

T先生!最近バスの事故でよく聞く「睡眠時無呼吸症候群」って、自分も関係あるの?|つじファミリークリニック|大野城市東大利にある内科・ペインクリニック

T先生!最近バスの事故でよく聞く「睡眠時無呼吸症候群」って、自分も関係あるの?

 

(厚生労働省・国土交通省・日本呼吸器学会の公的資料、および学術論文を元に一部AIを用いて作成しました)

📢 T先生!最近バスの事故でよく聞く「睡眠時無呼吸症候群」って、自分も関係あるの? 🚌💤


たろうくん
「T先生!ニュースで『運転手が睡眠時無呼吸症候群だった』っていうバスやトラックの事故をよく見るんだけど…これって特別な人だけの病気なの?うちのお父さんも結構大きないびきかいてるんだけど、ちょっと心配になっちゃって。」

T先生
「いい質問だね、たろうくん。実はね、これは『プロの運転手さんだけの話』ではなくて、日本で900万人以上が当てはまる可能性がある、すごく身近な病気なんだよ。お父さんのいびき、放っておかない方がいいかもしれないね。」

たろうくん
「えっ!900万人!?そんなに多いの?でも、なんで最近そんなにニュースになるの?」


🚨 ニュースで何が起きていたの?

T先生
「2025年3月に、事業用自動車事故調査委員会がとても大事な報告書を出したんだ。2022年の夏、名古屋高速で空港行きのバスが分岐帯にぶつかって横転・炎上して、運転手さんと乗客が亡くなった事故、覚えてる?」

たろうくん
「あ、ニュースで見た気がする…。あれもそうだったの?」

T先生
「そう。あの事故の原因は、運転手さんの睡眠時無呼吸症候群(SAS)による居眠り運転と推定されたんだ。しかもね、ここがとても大事なところなんだけど…運転手さんは事故の1年以上前に会社の適性診断で『SASの恐れが非常に高い』と指摘されていたんだよ。本人もSASの恐れを自覚していたんだけど、運行会社にも相談しなかったし、会社側も診断結果を軽視して詳しい検査を受診させなかった。本人と会社、両方の対応が後手に回ってしまったんだ。」

たろうくん
「えっ!?両方ともそのままにしちゃってたの…?」

🔹 最近の主な事案(2022〜2026年)

  • 名古屋高速バス横転・炎上事故(2022年8月):死亡2人・負傷7人。SASによる居眠り運転と推定。本人は1年以上前から「SASの疑い」を指摘されていたが、本人・会社ともに精密検査も治療も進めていなかった
  • 東名高速トラック多重追突事故(2022年11月):4人死亡。深夜帯の単調な運転で「集中力・注意力が低下」したと推定
  • 新名神高速バス追突事故(2023年4月):20人重軽傷。運転者交代を怠った長時間運転による居眠り

T先生
「過去にも、2012年の関越自動車道のツアーバス事故(7人死亡)など、運転手さんの健康管理や過労が問われる悲しい事故が起きてきた。国も『他人事じゃない』って動き出しているんだよ。」


💤 そもそも睡眠時無呼吸症候群って何?

T先生
「睡眠時無呼吸症候群、英語の頭文字をとって SAS(サス) って呼ぶんだけど、簡単に言うとね、寝ている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気なんだ。」

たろうくん
「呼吸が止まる!?それって苦しくないの?」

T先生
「でもね、本人は寝てるから気づかないんだよ。横で寝ている家族の方が先に気づくことが多いんだ。『いびきが急に止まって、しばらくしてから “グガッ!” と大きな音とともに再開する』…これがSASの典型的な姿。」

🔹 医学的な定義

  • 無呼吸:睡眠中に呼吸が 10秒以上 完全に止まる状態
  • 低呼吸:呼吸は止まらないが、換気量が落ちて血中酸素が下がる状態
  • 1時間あたりに無呼吸+低呼吸が何回起きるかを AHI(無呼吸低呼吸指数) という

T先生
「このAHIで重症度が決まるんだ。」

📊 AHIによる重症度

  • 🟢 正常:5回未満
  • 🟡 軽症:5〜15回
  • 🟠 中等症:15〜30回
  • 🔴 重症:30回以上(=2分に1回以上呼吸が止まっている計算!)

たろうくん
「重症って…2分に1回以上、呼吸が止まってるってこと!?そんなんで寝てるって言えるの?」

T先生
「言えないんだよ。重症の人の中には1時間に60回以上、つまり1分に1回以上呼吸が止まっている人もいる。だからSASの人は『8時間寝ても全然疲れが取れない』『日中もうろうとする』って状態になってしまうんだ。」


📈 日本人の900万人が “潜在患者”

T先生
「世界的に有名な研究(Lancet Respiratory Medicine, 2019)の試算では、日本に 中等症以上のSAS患者は約900万人いると推定されているんだ。一方で、実際に治療を受けている人はたったの 約50万人。」

たろうくん
「えっ!?じゃあ、残りの850万人は気づいてもいないってこと…?」

T先生
「その通り。それくらい『知られていない国民病』なんだよ。」

🔹 日本人特有の事情(知ってほしいこと)

  • 痩せていてもなる:欧米と違って、日本人SAS患者の約4割は肥満ではない。顎が小さい・下顎が後退している骨格 が大きな原因
  • 半分の人は眠気を感じない:『眠くないから関係ない』は通用しない。家族からのいびき・無呼吸の指摘が決め手

🩺 こんな症状ありませんか?セルフチェック

T先生
「じゃあ、自分や家族がSASかどうかを見分けるサインを教えるね。これは世界中で使われている STOP-Bang っていうチェックリストで、当てはまる項目を数えるだけ。」

 STOP-Bang セルフチェック(各1点)

  • S いびきが大きい(隣の部屋まで聞こえる)
  • T 日中ぐったり疲れる・眠い
  • O 寝ている間に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
  • P 高血圧(または降圧薬を内服中)
  • B BMIが30以上(※日本人など東アジア人の基準)
  • A 50歳より上
  • N 首回りが40cm超
  • G 男性

🟢 0〜2点:低リスク
🟡 3〜4点:中リスク
🔴 5点以上:高リスク(中等症以上のSASが77%以上の確率)

たろうくん
「お父さん…いびき大きいし、日中もよく寝てるし、夜中に呼吸も止まってそうだし…4点以上ありそう!」

T先生
「それは要相談だね。日本語版STOP-Bangは、3点以上を陽性とすると中等症以上のSASを見つけ出す感度が 約96%(95.7%) と報告されている、すごく信頼できるツールなんだよ。」


❤️ 放っておくと何が怖いの?

たろうくん
「でも、ただのいびきでしょ?そんなに怖い病気なの?」

T先生
「実はね、SASは『睡眠の質が悪くなる』だけの病気じゃないんだ。心臓や血管をジワジワ蝕んで、命に関わる病気を引き起こすんだよ。特に重症(AHI30以上)になるほどリスクが跳ね上がる。」

🔹 SASを放置したときのリスク(健常者と比べて)

  • 高血圧:SAS患者の50〜60%が合併
  • 心房細動:重症SASで約5倍
  • 脳卒中:中等症〜重症で約3.6倍(再発リスクも上昇すると報告あり)
  • 心不全・心筋梗塞・冠動脈疾患のリスクも上昇
  • 突然死(特に夜間):重症で増加
  • 2型糖尿病・認知症リスクも上昇

たろうくん
「ええっ…!脳卒中が3倍以上って…。」

T先生
「だから僕たち家庭医は、高血圧の患者さんやいびきの相談を受けた時、必ずSASも疑うようにしているんだ。SASを治療すると、これらの病気のリスクも下がるってことが分かっているからね。例えば、メタ解析ではCPAP治療で心房細動の発生リスクが約44%低下、アブレーション後の再発も明らかに減ることが報告されているんだよ。」


🚌 どうしてバス事故につながるの?

たろうくん
「ニュースの話に戻るんだけど、なんで眠気で事故になるの?運転中に寝ちゃうってこと?」

T先生
「うん、しかもね、SASの怖さは “自分では眠気を自覚していない” ことなんだ。脳が極端な低酸素・睡眠不足の状態に慣れてしまって、『眠い』というアラームすら出なくなる。これを 覚低運転(かくていうんてん) と言うんだよ。」

📊 SAS患者の事故リスク(メタアナリシス)

  • SAS患者の交通事故リスク:健常者の 約2.4倍(Tregear, 2009、商用ドライバー対象のメタ解析)
  • 日中の強い眠気がある男性:ニアミス4.7倍(Ward KL et al., 2013)

T先生
「『眠気を感じたまま運転を続けるのは、お酒を飲んで運転するのと同じくらい危険』とまで国際的には言われているんだよ。」

たろうくん
「えっ、飲酒運転と同じ…!?それは怖い。」


🔍 検査ってどんな流れ?

T先生
「『自分も心配かも』と思ったら、まずクリニックに相談してほしい。検査は大きく3段階あるんだ。」

🔹 検査のステップ

  1. 問診・身体所見:いびきの様子、日中の眠気(エプワース眠気尺度)、STOP-Bang、首回りやBMIを確認
  2. 簡易検査(自宅でできる):指にセンサーをつけて寝るだけ。SpO₂(血中酸素)の下がり具合や鼻の気流を測定。保険適用で自己負担2,000〜3,000円程度
  3. 精密検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ):簡易検査で疑わしければ、脳波・心電図・呼吸まで全部測る本格検査。1泊入院または在宅PSG

T先生
「ここで嬉しいニュースがあって、2026年6月の診療報酬改定 で、CPAPの保険適用基準が緩くなったんだ。今までは簡易検査でAHI40以上が必要だったけど、今は30以上で適用になる。精密検査も20以上から 15以上で適用。」

たろうくん
「じゃあ、軽めの人でも治療しやすくなったってこと?」

T先生
「その通り!『早く見つけて、早く治療する』方向に国も舵を切ったんだよ。」


🛌 治療法あれこれ

T先生
「治療は重症度や体型、生活スタイルに合わせて選ぶよ。代表的なのは3つ。」

🥇 ① CPAP(シーパップ)療法 ― 中等症〜重症の第一選択

  • 鼻マスクから一定の空気圧を送り、気道を内側から押し広げる
  • 保険適用、月1回通院、自己負担は月5,000円前後(3割負担)
  • 効果:日中の眠気が劇的に改善、血圧低下、心血管イベント抑制
  • 1日4時間以上の使用で、運転事故リスクが約70%減少(Karimi 2015、健常者並みに戻る)
  • 課題:装着の不快感。マスクや圧の調整で大きく改善できる

🥈 ② 口腔内装置(マウスピース) ― 軽症〜中等症向け

  • 下顎を少し前に出して固定し、舌が落ち込まないようにする
  • 歯科で保険作製、自己負担1〜1.5万円程度
  • 自分の歯が20本以上残っていることが望ましい

🥉 ③ 減量・生活習慣改善 ― すべての方に基本

  • 体重10%減でAHIは約26%減少(Peppard, 2000)。体重がさらに減ればAHIもさらに下がることが期待できる
  • 寝酒をやめる(お酒は喉の筋肉を緩めて悪化させる)
  • 横向きで寝る(仰向けで悪化する人が多い)
  • 禁煙

たろうくん
「体重を10kgくらい減らすだけでも、結構効くんだね!」

T先生
「そうなんだ。軽症の方なら、生活習慣の改善だけでCPAPが要らなくなることもあるよ。」


🚗 治療すれば運転リスクも健常者並みに

T先生
「ここはとても大事なメッセージなんだけど…SASだからといって運転を諦める必要はないんだ。きちんと治療すれば、事故リスクは健常者と同じレベルまで下がる。」

📌 治療効果のエビデンス

  • スウェーデンの大規模研究(n=1,478):未治療では1,000人年あたり7.6件の事故 → CPAP適切使用で2.5件に 約70%減少
  • 米国睡眠医学会(AASM)も「CPAPを4時間/夜以上使用で事故70%減」と公式声明

T先生
「怖がって受診を避けるよりも、早く診断して早く治療する方が、結果的に運転寿命を延ばせる。これは家族のためにも、自分自身のためにも、本当に大切なことなんだよ。」


📝 まとめ!

 SASは “知られていない国民病”
日本に中等症以上の潜在患者が約900万人。でも治療を受けているのは50万人だけ。残りの850万人は気づいていません。

 「いびきが大きい」「日中眠い」「家族に呼吸停止を指摘された」は要注意
STOP-Bangで5点以上は高リスク。痩せていても顎の形でなる人がいるため、体型だけでは判断できません。

 放置すると心臓・血管・脳の重大病へ
高血圧合併50〜60%、重症SASで心房細動5倍、中等症〜重症で脳卒中3.6倍。命に関わる病気の “原因の原因” になり得ます。

 運転中の事故リスクは健常者の2倍以上
日中の眠気が強い男性ではニアミス4.7倍。「眠気を感じない覚低運転」も怖いポイントです。

 CPAPを1日4時間以上使えば、事故リスクは健常者並みに戻る
治療をすれば運転を諦めなくていい。早く見つけて早く治療するのが、家族と自分を守る最短ルートです。

 2026年6月から保険適用が広がった
簡易検査でAHI30以上、精密検査で15以上からCPAP保険適用に。早期治療しやすい時代になりました。


たろうくん
「わかった!今日帰ったらお父さんに『一度クリニックで簡易検査を受けてみよう』って言ってみる!」

T先生
「うん、ぜひそうしてあげて。”いびき” を笑い話で終わらせず、家族で話題にすることが、お父さんの命と、ご家族の安心を守る第一歩になるからね。気になる方はいつでも相談してください。」 😊


📚 参考リンク(一次情報)

公的資料

学会ガイドライン

疫学・エビデンス