T先生!片頭痛で救急外来に行ったら、どんな治療がいいの?
📢 T先生!片頭痛で救急外来に行ったら、どんな治療がいいの? 🏥
たろうくん
「T先生!お母さんの友達が片頭痛がひどくて救急外来に行ったんだけど、痛み止めの注射をしてもらったって言ってたよ。救急外来の片頭痛治療って、今はどんなお薬が一番いいの?」
T先生
「いい質問だね、たろうくん!実はね、2025年にアメリカ頭痛学会(AHS)から、救急外来での片頭痛治療に関するガイドラインが大きく更新されたんだよ。26個のランダム化比較試験(RCT)、合計3,019人のデータを分析した、とても信頼性の高い研究なんだ。脳神経内科の先生たちの間でも”パラダイムシフト“と話題になっているよ。」
たろうくん
「パラダイムシフト?何が変わったの?」
T先生
「ひと言でいうと、“お薬だけの治療”から”神経ブロックを中心とした治療”への大きな転換が始まったんだ。」
💊 最も推奨される2つの治療法(Level A)
T先生
「今回のガイドラインでは、治療法をランク分けしているんだけど、“必ず行うべき”(Level A)に選ばれたのは2つだよ。」
たろうくん
「2つだけ?」
T先生
「そう!ひとつはプロクロルペラジンの点滴で、もうひとつは大後頭神経ブロック(GONB)という方法だよ。特に注目すべきは大後頭神経ブロックなんだ。」
たろうくん
「大後頭神経ブロックって何?注射するの?」
T先生
「後頭部にある太い神経(大後頭神経)のまわりに局所麻酔薬を注射する手技だよ。今回3つの質の高い研究(Class I)で効果が確認されたんだ。面白いことに、ある研究では注射の経験が7回以上あるお医者さんが行うと、全員が50%以上の痛み軽減を達成したんだよ!」
たろうくん
「すごい!お医者さんの経験も大事なんだね。」
T先生
「そうなんだ。しかも副作用がとても少なくて、注射部位の痛みくらい。全身の副作用がほぼないのが大きな利点だね。」
📋 “使うべき”治療法(Level B)
T先生
「次に“使うべき”(Level B)に分類されたのは5つ。デキスケトプロフェンとケトロラク(どちらもNSAIDs)、メトクロプラミド(吐き気止め)、スマトリプタンの皮下注射、そして眼窩上神経ブロックだよ。」
たろうくん
「スマトリプタンって聞いたことある!」
T先生
「日本ではイミグラン®という名前で使われているね。ある研究では51%の患者さんが2時間で痛みゼロになったのに対し、偽薬では30.8%だったよ。ただし心臓に重い病気がある人には使えないから注意が必要なんだ。」
たろうくん
「メトクロプラミドとデキスケトプロフェンっていうのは?」
T先生
「メトクロプラミドは日本ではプリンペラン®として知られる吐き気止めだよ。研究ではメトクロプラミドとデキスケトプロフェンを組み合わせると、それぞれ単独よりも効果が高いことが分かったんだ。」
❌ オピオイドは”絶対に使ってはいけない”
T先生
「今回のガイドラインで最も重要なメッセージのひとつが、オピオイド(麻薬系鎮痛剤)の明確な否定なんだ。」
たろうくん
「え!痛み止めなのに使っちゃダメなの?」
T先生
「そう。ヒドロモルフォンの点滴は“絶対に使ってはいけない”(Level A)に分類されたんだ。質の高い研究で、プロクロルペラジンの方が34%も多くの患者さんで痛みが軽減したよ。しかもオピオイドは救急外来の再受診率が上がるし、薬物乱用性頭痛の原因にもなるんだ。」
たろうくん
「痛みを抑えるどころか、かえって悪くなることもあるんだね…」
T先生
「その通り。アメリカでは2007〜2010年には54.1%の片頭痛患者にオピオイドが使われていたけど、2015〜2018年には28.3%まで減ったんだよ。それでもまだ多いよね。アセトアミノフェン(カロナール)の点滴も“使わないほうがよい”に分類されたよ。」
🇯🇵 じゃあ日本ではどうなの?
たろうくん
「でもT先生、プロクロルペラジンって日本でも使えるの?」
T先生
「実は、ここがとても大事なポイントなんだ。アメリカのガイドラインで第一選択とされたプロクロルペラジンや、デキスケトプロフェン、ケトロラクは、日本では未承認だったり、ほとんど使われていないお薬なんだよ。」
たろうくん
「えっ!じゃあ日本の救急外来ではどうするの?」
T先生
「日本の救急外来で使えるのは、NSAIDsではフルルビプロフェン(ロピオン®)の点滴やジクロフェナク坐薬(ボルタレン®)、吐き気止めとしてメトクロプラミド(プリンペラン®)、そしてトリプタンとしてスマトリプタン皮下注(イミグラン®)などが中心になるよ。」
たろうくん
「使えるお薬が限られているんだね。」
T先生
「そうなんだ。だからこそ、今回のガイドラインで大後頭神経ブロックがLevel Aに選ばれたことの意味は、日本ではさらに大きいんだよ。薬の選択肢が限られている分、神経ブロックという”お薬に頼らない治療法”の重要性がとても高まっているんだ。」
たろうくん
「お薬が使えなくても、注射で治せるかもしれないってことだね!」
T先生
「その通り!大後頭神経ブロックは比較的簡便な手技で、全身の副作用が少なく、お薬が効きにくい症例でも有効な可能性があるんだ。脳神経内科や救急の先生たちの間でも、この手技をしっかり習得しておくことが重要と言われているよ。」
📝 まとめ!
✅ 救急外来の片頭痛治療は”薬物中心”から”神経ブロックを含む治療戦略”へパラダイムシフト
✅ 大後頭神経ブロックとプロクロルペラジン点滴が最高推奨(Level A)
✅ オピオイド(ヒドロモルフォン)は”絶対に使わない”(Level A禁止)−再受診率増加・依存リスク
✅ 日本ではプロクロルペラジン等が未承認のため、大後頭神経ブロックの重要性がさらに高い
✅ 日本で使える薬はロピオン®・プリンペラン®・イミグラン®・ボルタレン®坐薬など
たろうくん
「へぇ〜!片頭痛の治療って、ただ痛み止めを打てばいいってわけじゃないんだね!しかも日本とアメリカで使えるお薬も違うなんて知らなかった!」 😊
T先生
「そうだね!大事なのはエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を選ぶこと。そして日本では神経ブロックの技術がますます重要になってきているんだ。片頭痛で困ったときは、正しい治療を受けられるように知っておくといいね!」 💊
📚 参考文献
Robblee J, Minen MT, Friedman BW, et al. 2025 guideline update to acute treatment of migraine for adults in the emergency department: The American Headache Society evidence assessment of parenteral pharmacotherapies. Headache. 2026;66:53–76. doi:10.1111/head.70016