T先生!フルミスト(鼻のワクチン)と注射のインフルワクチン、子どもにはどっちがいいの?
- 2026年10月7日
- 教えて!T先生,最近の研究,子どもの健康,エイジング・ケア、予防医学,感染症

(文末の参考文献をもとに、一部AIを用いて作成しました)
✅ この記事のまとめ
2〜18歳なら、日本小児科学会は鼻のワクチン(フルミスト)と注射を「同等に推奨」しています。インフルエンザを防ぐ力に、はっきりした差は確認されていません。
ただし、重い喘息がある子、周りに免疫がとても弱い人がいる子などには、注射がすすめられています。
たろうくん
「T先生!いちばん下の弟が『注射いやだ』って泣くんだ。鼻にシュッとするインフルのワクチンがあるって本当?」
T先生
「本当だよ。フルミストという鼻のワクチンで、日本では2024/25シーズンから打てるようになったんだ。2026年9月には、日本小児科学会がその使い方の考え方を新しくしているよ。」
👃 フルミストと注射のちがい(回数・痛み・費用)
📌 2つのワクチンのちがい
🔹 鼻(フルミスト):2〜18歳。左右の鼻に1回ずつスプレーして、1シーズンに1回。弱めたウイルスを使う「生ワクチン」
🔹 注射:生後6か月から。13歳未満は2回(2〜4週あける)、13歳以上は1回または2回
🔹 どちらも子どもは任意接種のため、基本は自費(当院は鼻8,000円・注射は13歳未満3,500円×2回)
たろうくん
「1回で済んで痛くないなら、鼻のほうが絶対いいじゃん!」
T先生
「痛みが少ないのは大きな良いところだね。学会も、子どもにとって痛みが少ないことには重要な意味があると書いている。でもね、ここが大事なところなんだけど、効き目は鼻のほうが上、とは言えないんだ。」
📊 フルミストの効果は注射より高い?
T先生
「学会は『2つのワクチンの間に、インフルエンザを防ぐ効果の明確な優位性は確認されていない』とまとめている。国が承認したときの試験でも、2つを直接比べてはいないんだ。」
📌 数字で見るフルミストの効果
・国内の試験(2016/17シーズン・2〜18歳の約900人):インフルエンザにかかった子は、ワクチンなしの組の35.9%に対し、フルミストの組は25.5%(かかる危険が28.8%減った)
・2025/26シーズンの国内の子どもの調査(A型):防ぐ効果は注射43%、フルミスト81%。ただしフルミストの数字は幅が広く(15〜96%)、学会は「この報告だけで優劣を評価するのは難しい」としている
たろうくん
「えっ、81%!?やっぱり鼻の勝ちじゃん!」
T先生
「実はね、81%は15〜96%と幅がとても広い数字なんだ。アメリカでは、フルミストの効きが悪いシーズンが続いて、一時おすすめをやめたこともある。いまは再開して、注射と同じ扱いだよ。だから『どっちが効くか』より『その子に合うか』で選ぶのがいいんだ。」
🫁 喘息のある子はフルミストを受けられる?
たろうくん
「その子に合うかって、どういうこと?」
T先生
「いちばん多いのは喘息の相談だね。学会は、重い喘息がある子には注射をすすめている。添付文書でも、重い喘息の子とゼーゼーしている子は注意が必要な人とされているよ。」
たろうくん
「軽い喘息ならいいの?」
T先生
「軽い喘息で鼻のワクチンを使えるかは、いまの状態を見て医師が決めるよ。喘息と言われていなくても、ゼーゼーをくり返す子や、最近吸入の薬が増えた子は、予約のときに必ず伝えてね。」
👶 フルミストが受けられない子・注射がすすめられる子
T先生
「喘息のほかにも、鼻のワクチンが向かない子がいる。主なものをまとめておくね。」
📌 注射がすすめられる・鼻が使えない主なケース
・当日、はっきりした熱がある(注射も同じ)
・重い喘息がある
・本人に免疫の病気がある、免疫を抑える薬を使っている(ステロイドの飲み薬・注射など。やめて半年以内の場合も相談を)
・周りに、免疫がとても弱い人(免疫不全の人)がいる
・ゼラチンで強いアレルギー(アナフィラキシー)が出たことがある
・妊娠している、脾臓がない、人工内耳を入れている、ミトコンドリア病がある
📌 予約のときに伝えてほしいこと
・卵や鶏肉のアレルギー
・アスピリンなどの薬を続けて飲んでいる
・タミフルなどのインフルの薬を飲んでいる(鼻のワクチンが効きにくくなるおそれ)
たろうくん
「けっこうあるんだね。打ったあと、保育園や学校は休まないといけないの?」
T先生
「学会は『登園や登校を制限する必要はない』としているよ。ただ、打ってから1〜2週間は、免疫がとても弱い人との近い接触をできるだけ避けてね。周りにうつるかどうかは、前のコラム『T先生!フルミストを打った子からインフルエンザってうつるの?』で詳しく話しているよ。」
⚠️ フルミストの副反応と、打ったあとの熱
T先生
「フルミストのあとに多いのは鼻水・鼻づまりで、国内の試験では59.2%、つまり約6割の子に出ているよ。咳が27.8%、のどの痛みが17.9%だった。注射のほうは、打ったところの赤み・腫れ・痛みが多いんだ。」
たろうくん
「打ったあとに熱が出たら、インフルかどうか分かるの?」
T先生
「いい質問だね。フルミストのあとしばらくは、インフルの検査で陽性が出ることがある。熱で受診するときは『最近フルミストを打った』と伝えてね。それから、アスピリンやジクロフェナク、メフェナム酸という成分の痛み止め・解熱剤は、一緒に使うのに注意が必要とされている。大人用の薬を子どもに使わず、熱が出たら処方された薬を使うか、相談してね。」
📝 まとめ!
✅ 2〜18歳なら鼻も注射も同等に推奨。防ぐ効果にはっきりした差は確認されていない
✅ 鼻は1回で痛みが少ない。注射は13歳未満なら2回
✅ 重い喘息、ゼラチンのアレルギー、周りに免疫がとても弱い人がいる子などは注射がすすめられる
✅ 鼻のあとは鼻水・鼻づまりが約6割。受診のときは打ったことを伝える
✅ 持病・飲んでいる薬・家族のことを予約時に伝えて、医師と一緒に決める
たろうくん
「弟は持病もないし、飲んでいる薬もないから、鼻のワクチンを相談してみるよ!ありがとう、T先生!」 😊
T先生
「うん、それがいいね。当院でも2〜18歳のフルミストを受けているよ。数に限りがあるから、お電話で予約してね。どちらのワクチンも、流行が本格的になる前に早めに打っておこう。」
📚 参考文献
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会『経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方:第2版〜医療機関の皆様へ〜』2024年9月2日(2026年9月2日改訂)
第一三共『フルミスト点鼻液 電子添文(2026年8月改訂・第6版)』PMDA
KMバイオロジクス『インフルエンザHAワクチン「KMB」電子添文(2026年7月改訂・第9版)』PMDA
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会『2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針』2025年
辻 隆宏(つじ たかひろ)
つじファミリークリニック 院長・医師
- 日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医
- 日本ペインクリニック学会認定 ペインクリニック専門医
- 日本内科学会認定 認定内科医
自治医科大学医学部卒業。八女市矢部診療所、宗像市国民健康保険大島診療所の所長として、へき地・離島の地域医療に従事。2022年6月、大野城市につじファミリークリニックを開院。