T先生!更年期のホルモン補充療法(HRT)で血栓ができやすいって本当?飲み薬と貼り薬で違うの?

(文末の参考文献をもとに、一部AIを用いて作成しました)
✅ この記事のまとめ
デンマークの大規模な調査で、飲み薬のホルモン補充療法は足や肺の血栓(静脈血栓塞栓症)の増加と関連し、貼り薬・塗り薬では全体として増加は見られませんでした。
脚や肺の血栓が増える分は、飲み薬を1年使って1,055人に1人です。
血栓を疑う症状がないときは自己判断でやめたり替えたりせず、自分に合う形を主治医と選ぶことが大切です。
たろうくん
「T先生!お母さんが『汗がすごくて眠れない。ホルモンの薬を勧められたけど、血栓が怖い』って言ってたんだ。本当に危ないの?」
T先生
「心配になるよね。先に答えを言うとね、“飲むか、皮ふから入れるか(貼る・塗る)”で結果が分かれたという研究が、2026年9月に発表されたんだ。」
🩸 ホルモン補充療法(HRT)と血栓って何?
T先生
「更年期になると、卵巣から出る女性ホルモン(エストロゲン)が減って、ほてりや汗が止まらないといった症状が出る人がいる。減ったホルモンを薬で補うのがホルモン補充療法、英語の頭文字でHRTっていうんだ。」
たろうくん
「じゃあ血栓は?」
T先生
「血管の中で血が固まってできるかたまりのことだよ。脚の静脈にできると脚が腫れて痛む。それが流れて肺の血管に詰まると、急に息が苦しくなる。この2つをまとめて静脈血栓塞栓症っていうんだ。」
🔬 デンマークのHRT研究、何を調べたの?
📌 研究のかたち(BMJ 2026年9月)
・デンマーク全国の医療データ(2003〜2021年)、50〜69歳の女性
・静脈血栓塞栓症 9,807人、脳梗塞 18,460人、心筋梗塞 11,974人を、同じ生まれ年で、血栓の病気になっていない女性と比べた
・もともと血栓・がん・肝臓の病気などがある人は対象外
T先生
「”今HRTを使っている人”と”今は使っていない人”で、病気の起こりやすさを比べた研究だよ。薬の形・量・使っている期間ごとに分けて見ているのがポイントなんだ。」
たろうくん
「血栓になったことがある人は入ってないんだね。」
T先生
「そう。前に血栓ができたことがある人は、貼る・塗るタイプも含めて、ホルモンの薬を使えないことが多いんだ。必ず主治医に伝えてね。それと、この研究は更年期のHRTの話。避妊や生理の治療に使う低用量ピルは別の薬だから、そちらは別に確認してね。」
📊 飲み薬と貼り薬・塗り薬で、血栓リスクはどう違う?
📌 使っていない人と比べた結果
・飲み薬:静脈血栓塞栓症 1.6倍、脳梗塞 1.3倍、心筋梗塞 1.2倍(ハザード比)
・飲み薬を1年使うと、静脈血栓塞栓症は1,055人に1人、脳梗塞は1,642人に1人、心筋梗塞は3,846人に1人が余分に起こる計算
・貼り薬・塗り薬:全体として増加なし
・参考:HRTを使っていない人でも、静脈血栓塞栓症は1年で1万人あたり15.8人
たろうくん
「えっ、飲み薬だと1.6倍!?」
T先生
「でもね、ここが大事なところなんだけど…倍率だけだと大きく感じるよね。もとの起こりやすさと並べると、飲み薬で増える分は1年で1万人に約9人。ゼロではないけれど、ほとんどの人には起こらない数なんだ。」
たろうくん
「じゃあ、貼り薬なら安心?」
T先生
「全体としては増えていなかった。ただ1つだけ例外があって、貼り薬・塗り薬に黄体ホルモンを周期的に組み合わせる方法では、心筋梗塞の増加(ハザード比2.1)と関連していたんだ。結果の幅が広くて、はっきりしない部分も残る。著者たちは“どの経路で使うか”がリスクを下げるうえで大事だとまとめているよ。」
💊 飲む量と期間は?日本のエストラジオールの用量
📌 量と期間でみると
・静脈血栓塞栓症:飲み薬なら量や期間にかかわらず増加
・脳梗塞・心筋梗塞:飲み薬のエストラジオール1日1mgを超える量で、本文の期間別解析では脳梗塞は1年超、心筋梗塞は5年超の使用で増加(5年を超えると、ともに1.8倍)
たろうくん
「お母さんの薬は何mgなんだろう?」
T先生
「日本のエストラジオールの飲み薬は、添付文書で、更年期の症状には1日0.5mg、増やしても1日1.0mgとされている。研究で脳や心臓の病気が増えた”1mgを超える量”には入らない範囲だね。ただし、量が少なければ増えないと証明されたわけではないし、脚や肺の血栓は量が少なくても増えていた。ほかの飲み薬は成分も量も違うから、自分の薬は主治医に確認してね。」
🤔 この研究だけでは分からないこと
たろうくん
「これ、デンマークの話でしょ?日本人も同じなの?」
T先生
「これは薬を割りふって比べた試験ではなく、記録を調べた観察研究だから、”関係がある”とまでしか言えない。体重やたばこのデータもなく、その影響を分けきれていないんだ。著者たちも、いろいろな人種の人がいる集団にそのまま当てはまるとは限らないと書いている。」
たろうくん
「じゃあ、どうやって選べばいいの?」
T先生
「日本産婦人科医会の解説では、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・片頭痛など血栓のリスクがある人には、貼る・塗るタイプのエストラジオールが第一選択とされているんだ。」
💡 HRT中の人・迷っている人は、こうしよう
① 血栓を疑う症状がないときは、自己判断でやめたり、変えたりしない。 飲み薬から貼り薬・塗り薬への切り替えも、症状・持病・子宮の有無などをみて主治医と決める。
② 持病・たばこ・血栓になったことは、最初に伝える。 手術や入院の予定、長時間の移動があるときも、HRT中だと担当の医師に伝えよう。
③ 急な息切れ・胸の痛み、手足のまひ・ろれつが回らない・急に見えにくいときは、ためらわず119番。 片脚の痛みやむくみも、すぐに医療機関へ相談・受診しよう。こうした血栓を疑う症状が出たら、HRTの使用を中止して、受診を優先してね。
📝 まとめ!
✅ 飲み薬は、静脈血栓塞栓症の増加と関連
量や期間にかかわらず増加(全体で1.6倍)。増える分は1年で1,055人に1人。
✅ 貼り薬・塗り薬では、全体として増加なし
例外は、黄体ホルモンを周期的に組み合わせる貼り薬・塗り薬と心筋梗塞の関連だけ。
✅ 脳梗塞・心筋梗塞は”多い量を長く”で増加
飲み薬のエストラジオール1日1mg超で、本文の期間別解析では脳梗塞は1年超、心筋梗塞は5年超。日本のエストラジオールの飲み薬は、更年期症状に1日0.5〜1.0mg。
✅ 観察研究で、体重やたばこの情報はない
肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症など血栓のリスクがある人は、貼る・塗るタイプが第一選択とされている。
✅ 血栓を疑う症状がないときは自己判断でやめない・変えない
急な息切れ・胸の痛み・手足のまひは119番。片脚の痛み・むくみもすぐに相談・受診。血栓を疑う症状があるときは使用を中止してね。
たろうくん
「お母さんに『やめる前に、合う形を先生と相談してね』って言ってみる!」 😊
T先生
「うん、それがいちばんいい伝え方だね。今の薬や持病をメモして、主治医に相談してみてね。」
📚 参考文献
- Berggreen J, Pourhadi N, Wood-Kurland H, Løkkegaard E, Torp-Pedersen C, Meaidi A. Contemporary menopausal hormone therapy and thrombotic disease: nationwide nested case-control study. BMJ 2026;394:e100688. PMID: 42778212
- BMJ Group『Oral menopausal hormone therapy linked to higher blood clot risk in legs or lungs regardless of dose or duration』(プレスリリース)2026年9月
- 日本産婦人科医会『(2)更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)』
- ジュリナ錠0.5mg 添付文書(2025年10月改訂 第5版)『KEGG 医療用医薬品情報』