T先生!子どもが熱を出したのに、抗生物質が出ないのはなぜ?
- 2026年10月22日
- 教えて!T先生,最近の研究,子どもの健康,よくある症状とお悩み,感染症

(文末の参考文献をもとに、一部AIを用いて作成しました)
✅ この記事のまとめ
抗生物質(抗菌薬)は細菌の薬で、かぜ・インフルエンザ・RSウイルスなどのウイルスには効きません。溶連菌など必要なときは、きちんと使います。
日本の0〜19歳の飲み薬の抗菌薬の使用量(子どもの人数あたり)は、2011年度から2022年度で58.6%減りました。
熱が3日以上続いて具合が悪いときは再受診を。息が苦しそう・水分がとれず半日以上おしっこが出なくてぐったりしているとき、生後3か月未満の赤ちゃんの熱は、すぐ受診を。
たろうくん
「T先生!弟が熱を出して病院に行ったけど、抗生物質が出なかったんだ。お母さんが『前は出してもらえたのに』って心配してたよ。」
T先生
「心配になるのは自然なことだよ。なぜ出なかったのか、一緒に見ていこう。」
🦠 抗生物質(抗菌薬)はウイルスに効かない
📌 細菌とウイルスのちがい(厚生労働省の手引きより)
・細菌:自分の力で増える小さな生き物。抗生物質(抗菌薬)が効く
・ウイルス:人や動物の細胞の中でしか増えられない。抗生物質(抗菌薬)は効かない
・「抗生物質」「抗菌薬」「抗生剤」は、ふだんはほぼ同じ意味で使われている
たろうくん
「かぜって、どっちなの?」
T先生
「子どものかぜの多くはウイルスで、自然に治っていくよ。小さい子は1年に平均6〜8回もかぜをひくんだ。インフルエンザやRSウイルスもウイルス。インフルエンザには別に『抗ウイルス薬』があるよ。」
たろうくん
「でも前に抗生物質を飲んだら、次の日には熱が下がったよ?」
T先生
「子どものかぜは2〜3日目くらいがいちばんつらくて、そこから自然に良くなっていくことが多いんだ。そのころに飲み始めると、薬が効いたように見える。国の手引きにも、『飲み始めたあとで良くなった』と『飲んだから良くなった』は別のことだと書かれているよ。」
💊 いらない抗菌薬で起こること:副作用と耐性菌
たろうくん
「じゃあ、念のため飲んでおくのはダメなの?」
T先生
「そこが大事なところなんだけど…抗菌薬は、お腹にすむ体の味方の細菌まで減らして、下痢などを起こすことがある。それに、薬が効かない『耐性菌(たいせいきん)』が生き残って増えやすくなる。本当に細菌の病気になったとき、いつもの薬が効きにくくなることがあるんだ。だから国は2016年に『薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン』をつくり、必要なときに使う取り組みを進めてきたんだよ。
でも、お医者さんが必要と考えて出した抗菌薬は、指示された日数を飲みきってね。下痢などが出たら、やめる前に相談してね。」
📊 子どもの抗菌薬は約6割減った:国立成育医療研究センターの研究
📌 研究のやり方と結果(国立成育医療研究センター、2026年発表)
・全国の外来の診療記録(レセプト)から、0〜19歳の飲み薬の抗菌薬の処方・約4億800万件を調べた(2011〜2022年度)
・子どもの人数あたりの使用量(処方日数ベース)は58.6%減。特にマクロライド系は68.5%減、セフェム系は67.8%減
・耐性化のリスクが比較的低い種類(Access)の割合は11.2%→19.0%。WHOの目標は60%
たろうくん
「えっ、6割も! 子どもが減ったからじゃないの?」
T先生
「この研究は子どもの人数あたりで計算しているんだ。減り方は2016年の計画のあとに大きくなり、2020年の新型コロナの時期にもぐっと下がった。感染対策の影響もあったかもしれず、研究チームは『いくつもの理由が重なった可能性が高い』と考えているよ。」
T先生
「それに、これは処方の記録の研究で、一人ひとりに本当に必要だったかまではわからない。国全体の数字の話で、一人ひとりに出された薬が良い・悪いという意味ではないよ。量は減ったけれど、薬の選び方にはまだ改善の余地がある、というのが研究チームの見方なんだ。また15〜19歳は減り方が小さく、同じチームの別の研究では、テトラサイクリン系の飲み薬が増えていて、その多くがにきびに使われていたよ(ニキビ治療の最新も見てね)。にきびの治療で飲んでいる人は、自己判断でやめずに主治医と相談してね。」
✅ 抗菌薬が必要な病気:溶連菌・中耳炎など
たろうくん
「じゃあ、抗菌薬はもう使わないの?」
T先生
「そんなことはないよ。大事なのは必要かどうかを見きわめることなんだ。」
📌 抗菌薬を使う代表的な場面
・溶連菌(ようれんきん)によるのどの炎症:検査で陽性なら、抗菌薬を指示された日数飲みきる(手引きがすすめるペニシリン系では10日間)
・中耳炎:鼓膜を診て判断。全身の状態がよく、耳だれがなく、重くなるリスクが低ければ、抗菌薬を使わず2〜3日様子をみることもある
・長引く・重い細菌性の副鼻腔炎、百日咳、マイコプラズマなどの肺炎、細菌による肺炎など
T先生
「溶連菌は、熱が下がっても自己判断でやめないことが大事。リウマチ熱という重い合併症を防ぐためなんだ。」
たろうくん
「残った薬は、とっておいて次に使えばいい?」
T先生
「それはやめておこう。前の薬を自分の判断で飲むと、病気の見きわめが難しくなるし、副作用の心配もある。きょうだいに飲ませるのも同じだよ。」
🚨 抗菌薬が出なかったときの再受診の目安
T先生
「最初はウイルスと考えても、あとから中耳炎や副鼻腔炎、肺炎を起こすことがある。だから『どうなったらもう一度来ればいいか』が大事なんだ。手引きの子ども向けの説明をもとにまとめると、こうなるよ。」
🚑 すぐに受診(夜間・休日も。迷ったら子ども医療電話相談 #8000)
・肩で息をしている、苦しくて横になれない
・意識がおかしい
・水分がとれず、半日以上おしっこが出なくてぐったりしている
・のどを強く痛がって、よだれが出る
🏥 もう一度受診を
・3日以上熱が続いて具合が悪い、症状がだんだん悪くなる
・いったん良くなったのに、また悪くなった
・耳を痛がる・耳だれが出る(中耳炎のサインのことがある)
⚠️ 生後3か月未満の赤ちゃんの熱は別です
重い病気が隠れていることがあるので、様子を見ずに、夜間・休日でもすぐに受診してください。
たろうくん
「お医者さんに、どう聞けばいいの?」
T先生
「『この熱はウイルス? 細菌?』『どうなったら、もう一度来ればいい?』と聞いてみて。手引きにも、抗菌薬が出ないことが心配なら申し出てほしいと書かれているよ。前に出たのは、そのとき細菌の病気と判断されたからかもしれない。気になったら、その理由も聞いてみてね。」
📝 まとめ!
✅ 抗生物質(抗菌薬)は細菌の薬。ウイルスのかぜには効かない
子どものかぜの多くはウイルスで、自然に良くなります。
✅ 子どもの抗菌薬は2011〜2022年度で58.6%減った
必要なときに使う取り組みが進むなかでの変化です。薬の選び方にはまだ課題があります。
✅ 処方された抗菌薬は指示どおり飲みきる(溶連菌では特に大事)
熱が下がっても自己判断でやめず、残った薬を次の熱やきょうだいに使わないでください。
✅ 出なかったときは「再受診の目安」を聞いて帰る
熱が3日以上続いて具合が悪いときはもう一度受診を。息が苦しそう、半日以上おしっこが出ずぐったりしている、生後3か月未満の赤ちゃんの熱は、すぐに受診を。
たろうくん
「お母さんに伝えておくね!」 😊
T先生
「弟くん、早く元気になるといいね。」
📚 参考文献
Okubo Y, Uda K, Iwamoto N, Miyairi I『Long-term National Trends in Pediatric Oral Antibiotic Prescriptions in Japan, 2011–2022』JMA J. 2026;9(5):1156-1163. doi:10.31662/jmaj.2026-0031
Okubo Y, Uda K, Iwamoto N, Miyairi I『Oral Tetracycline Use in Children and Adolescents in Japan: Trends, Indications, and Treatment Patterns』J Dermatol. 2026;53(10):1491-1497. doi:10.1111/1346-8138.70404
国立成育医療研究センター『日本の子どもの経口抗菌薬処方は2011~2022年度で約6割減少 ~抗菌薬の種類と思春期の処方動向には課題~』プレスリリース, 2026年9月14日
厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課『抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編』2026年1月16日発行
同『抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編 患者・家族への説明』
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辻 隆宏(つじ たかひろ)
つじファミリークリニック 院長・医師
- 日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医
- 日本ペインクリニック学会認定 ペインクリニック専門医
- 日本内科学会認定 認定内科医
自治医科大学医学部卒業。八女市矢部診療所、宗像市国民健康保険大島診療所の所長として、へき地・離島の地域医療に従事。2022年6月、大野城市につじファミリークリニックを開院。