T先生!帯状疱疹って何度も再発するの?発疹が出ないこともあるって本当?
📢 T先生!帯状疱疹って何度も再発するの?発疹が出ないこともあるって本当? 🏥
たろうくん
「T先生!帯状疱疹って、一度かかると免疫ができるから二度とかからないって聞いてたんだけど……実は再発することもあるの?」
T先生
「たろうくん、こんにちは。帯状疱疹は『一生に一度の病気』と昔はよく言われていたよね。でもね、実はそうじゃないことが医学のデータから分かってきているんだよ。」
たろうくん
「えっ!再発するの!?」
T先生
「その通り!アメリカのメイヨークリニックという有名な病院のグループが行った大規模な研究で、帯状疱疹の再発率が詳しく調べられたんだ。」
🥇 帯状疱疹の再発率データ(Yawn et al., 2011)
- 最長12年(平均7.3年)追跡した1,669名のデータから、初発から8年時点での再発率はKaplan-Meier法による推定で約6.2%(95%信頼区間:4.9-7.4%)と報告された。
- 再発リスクが高い人の特徴として、
① 最初の発症時に免疫力が低下していた人(再発率12.0% vs 免疫正常者5.7%)
② 最初の発症時に痛みが30日以上続いた人(最も強い予測因子)
③ 女性(再発率7.2% vs 男性4.5%)
④ 初発時に50歳以上だった人
がそれぞれ指摘された。
たろうくん
「6%ってことは、100人いたら6人くらいは再発する見込みってことだね。意外と多いかも……。」
T先生
「そうなんだ。加齢やストレス、疲れなどで体の免疫力がガクッと落ちた時に、神経の根元に隠れていたウイルスがまた暴れ出すんだよ。特に、最初にかかったときに『痛みが長引いた人』は再発しやすい傾向があるから要注意だね。」
たろうくん
「なるほど……。じゃあ、もし昔に帯状疱疹になった人が、また同じようなピリピリした痛みを感じたら要注意だね!」
T先生
「その通り!……でもね、ここがとても大事なところなんだけど……帯状疱疹って、『発疹(ブツブツ)が出ないこともある』って知ってた?」
たろうくん
「ええっ!?帯状疱疹って、あの赤いブツブツと水ぶくれができるから『帯状疱疹(帯状の湿疹)』って呼ばれるんじゃないの!?」
T先生
「実はね、ウイルスが神経で暴れて激しい痛みだけを引き起こすのに、皮膚にはまったく発疹が出ないケースがあるんだ。これを専門用語で『無疱疹性帯状疱疹(Zoster sine herpete:ZSH)』と呼ぶんだよ。」
🥈 無疱疹性帯状疱疹(ZSH)について(Gilden et al., 1994)
- 皮疹(水ぶくれ)を伴わず、神経の走行に沿った痛みのみを引き起こす帯状疱疹。
- Gildenらが1994年に報告した2症例(62歳・66歳の免疫正常な男性)では、数か月〜数年続いた原因不明の神経痛の髄液からVZVのDNAがPCR検査で検出され、ZSHが臨床的な一病型として確立された。
- 現在では髄液中の抗VZV-IgG抗体の検出や、唾液のPCR検査など複数の検査方法が併用される場合があるが、いずれにしても通常の診察だけで診断するのは難しく、日常診療では見逃されやすい病態。
たろうくん
「へぇ〜!ブツブツが出ないのに帯状疱疹なんだ!それだと、ただの腰痛や筋肉痛だと思って放置しちゃいそうだね……。」
T先生
「まさにそこが一番怖いところなんだ。例えば、原因不明の顔面神経麻痺(ベル麻痺)の中には、実はZSHが隠れているケースが少なくないと報告されているんだよ。」
🥉 ベル麻痺とZSHの関係(Furuta et al., 2000 など)
- 急性末梢性顔面神経麻痺のうち、明らかな水ぶくれがなく『ベル麻痺』と診断された121例を調べた研究で、そのうち約29%(35例)にVZVの再活性化(=ZSH)が認められたと報告されている。
- 他の総説では「ベル麻痺の7-16%がZSHに相当する」という推定もあり、数値にはばらつきがあるが、ベル麻痺の背景にZSHが相当数存在するという点は複数の研究で一致している。
- また、胸部や腹部に起こる肋間神経痛の中にもZSHの症例報告があり、『発疹のない原因不明の神経痛』の鑑別診断として意識されている。
T先生
「発疹がないからといって『ただの神経痛』だと放置していると、ウイルスが神経を深く傷つけてしまい、一生残るような激しい痛み(帯状疱疹後神経痛)に移行してしまうことがあるんだよ。」
たろうくん
「それは怖すぎる……。じゃあ、どうすればいいの?」
T先生
「ポイントは3つ。まず、過去に帯状疱疹にかかったことがあっても『もうならない』と油断しないこと。次に、『体の片側だけがピリピリ、チクチク痛い』『デルマトーム(神経の走る帯状の範囲)に沿った痛みがある』と感じたら、発疹が出ていなくても早めにペインクリニックや皮膚科、神経内科などを受診してね。医師は痛みの特徴からZSHを疑って、発疹を待たずに早めにお薬(抗ウイルス薬)を出してくれることがあるんだ。」
たろうくん
「発疹がなくてもお医者さんに相談していいんだね!安心したよ、T先生ありがとう!」
📝 今回のまとめ
✅ 帯状疱疹は「一生に一度」ではなく再発する
大規模研究では8年時点で約6.2%が再発すると推定されています。特に「初発時に50歳以上」「免疫力が低下していた」「痛みが30日以上続いた」「女性」に該当する方は再発リスクがやや高めです。
✅ 発疹が出ない「無疱疹性帯状疱疹(ZSH)」が存在する
赤いブツブツがなくても、ウイルスの再活性化でピリピリした激しい神経痛が起こることがあります。ベル麻痺の一部や、原因不明の神経痛の背景にZSHが隠れている可能性が指摘されています。
✅ 発疹を待たずに、疑わしい痛みがあれば受診する
「発疹が出るまで様子を見よう」と放置すると、後遺症(帯状疱疹後神経痛)が残るリスクが高まります。片側だけ・帯状の範囲にピリピリ痛いというサインがあれば、早めの受診・早めの抗ウイルス薬治療が大切です。
📚 参考文献
1. Yawn BP, et al. “Herpes zoster recurrences more frequent than previously reported.” Mayo Clin Proc. 2011. DOI: 10.4065/mcp.2010.0618
2. Gilden D, et al. “Zoster sine herpete: a clinical variant.” Ann Neurol. 1994. DOI: 10.1002/ana.410350505
3. Furuta Y, et al. “High prevalence of varicella-zoster virus reactivation in herpes simplex virus-seronegative patients with acute peripheral facial palsy.” Clin Infect Dis. 2000. PMID: 10722439
