T先生!腰痛に運動はしたほうがいいの?

(文末の参考文献をもとに、一部AIを用いて作成しました)
✅ この記事のまとめ
ぎっくり腰のような急な腰痛でも、寝て過ごすより、できる範囲で普段どおり動くほうが、痛みや体の動きが回復しやすいとされています。
長引く腰痛(3か月以上)には運動療法が強く勧められています。治ったあとにウォーキングと腰痛の勉強を続けた人は、再発が減ったという研究も。
熱がある、脚に力が入らないなどのときは、運動より先に受診を。腰痛とともに新たに尿が出にくい・尿や便が漏れる、両脚の力が急に弱くなるなどのときは、すぐ救急受診してください。
たろうくん
「T先生!お父さんが腰が痛いって、休みの日はずっと横になってるんだ。運動なんてしないほうがいいよね?」
T先生
「痛いと動きたくなくなるよね。でも実はね、腰痛は『安静にするほど早く治る』とは限らないんだよ。」
🛌 急な腰痛は「安静」より「できる範囲で動く」
T先生
「日本の『腰痛診療ガイドライン2019』では、発症して4週間未満の急な腰痛には、安静よりも、痛みに応じて普段の活動を続けるほうが有用とされているんだ。急な腰痛の多くは、自然によくなっていくことが多いとされているよ。ただ、脚にしびれや痛みが走る坐骨神経痛を伴うときは、安静と動くことに大きな差はないとされているんだ。」
たろうくん
「じゃあ、すぐに筋トレを始めればいいの?」
T先生
「そこがポイント。急な時期に『特別な運動』をすると早く治る、という証拠はまだはっきりしないんだ。急な時期は、無理のない範囲でふだんの生活を続けることが大事。4週〜3か月の時期も、運動の効果はまだはっきりしない。運動療法がしっかり勧められているのは、3か月以上続く慢性の腰痛なんだよ。」
🚶 腰痛の再発とウォーキングの研究
たろうくん
「腰痛って、一回治ってもまたなるよね?」
T先生
「そうなんだ。そこで2024年、医学誌『ランセット』に、オーストラリアのWalkBack(ウォークバック)研究が載ったよ。」
📌 WalkBack研究
・腰痛が治ったばかりの大人701人(女性81%・平均54歳)
・「自分に合わせて少しずつ増やすウォーキング+腰痛の勉強」(理学療法士と6か月で6回面談)と、「何もしない」グループを比較
・生活に支障が出る腰痛がぶり返すまで:約208日 対 約112日(中央値)
たろうくん
「ぶり返すまでの日数が、倍近くのびたんだ!」
T先生
「そうだね。ただ、ウォーキング側は脚のトラブルが多めだった。距離は少しずつ増やそうね。」
🏃 慢性腰痛の人がランニングをした研究
たろうくん
「走るのはダメ?」
T先生
「2024年に、3か月以上腰痛が続く18〜45歳の40人で、ランニングを試した研究(ASTEROID)があるよ。歩きと軽いジョギングを交互にする30分を週3回・12週間のプログラム(運動の専門家がオンラインで伴走)に参加した人は、待機していた人より痛みと生活の不便さが少し改善したんだ。」
T先生
「でもね、差は研究者が『はっきり実感できる目安』とした幅には届かなかったし、脚の痛みが腰より強い人や、ここ3か月でよく走っていた人は対象外の、限られた人たちの研究なんだ。『歩くよりランニングのほうがいい』と比べた研究でもないよ。走るのが好きな人は、様子を見ながら少しずつ、くらいに受け取ってね。」
🧘 家でできる腰痛の運動のヒント
たろうくん
「家でできる運動はある?」
T先生
「ガイドラインでも『この運動がいちばん』とは決まっていないんだ。だから続けられるものを選ぼう。たとえば——」
🔹 例:腰を丸めずにできる運動(当院からの一例)
・プランク:うつ伏せで肘とつま先で体を支え、体をまっすぐに保つ
・お尻上げ(グルートブリッジ):仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げて数秒止める
・ウォーキング:少しずつ距離をのばす
T先生
「当院からのアドバイスとしては、いわゆる『腹筋』(上体起こし)は腰を大きく丸めるから、痛みが出るなら無理にやらなくていい。運動のあとの痛みが翌日も強く残る、日ごとに悪くなるなら、量を減らして相談してね。」
🪑 座りっぱなしの腰痛対策
たろうくん
「お父さん、仕事中はずっと座ってるんだって。」
T先生
「実は、仕事で座っていること自体が腰痛の原因になる、とまでは言えないという研究のまとめもあるんだ。でも座っていると体を動かす機会は減りがち。ときどき立ち上がって少し歩こう。」
⚠️ 当院からのお願い:こんなときは運動より先に受診を
・熱がある、体重が減ってきた、がんにかかったことがある、ステロイドの薬を長く使っている
・じっとしていても痛む(時間や動きに関係ない)、胸も痛む
・脚に力が入らない、しびれが広がる、尿や便が出にくい・漏れる
・転んだ・ぶつけたあとから痛い など
特に、腰痛とともに新たに尿が出にくい・尿や便が漏れる・股の間の感覚が鈍くなる、両脚の力が急に弱くなる場合は、すぐ救急受診してください。胸の痛みを伴う場合も、すぐ救急受診してください。
📝 まとめ!
✅ 急な腰痛は「安静」より「できる範囲で普段どおり」
特別な運動の効果は、急な時期にはまだはっきりしない。
✅ 3か月以上続く腰痛には運動療法が強く勧められている
「これが一番」という種類は決まっていないので、続けられるものを。
✅ 腰痛が治ったあとのウォーキング+腰痛の勉強で、再発までの期間がのびた
何もしない人 約112日、ウォーキングの人 約208日(WalkBack研究)。距離は少しずつ。
✅ ランニングは「好きな人が少しずつ」なら選択肢
改善はあったが、はっきり実感できる目安には届かなかった。
✅ 熱・脚に力が入らないときは受診が先。新たな排尿・排便の異常などは、すぐ救急受診を
たろうくん
「お父さんを散歩に誘ってみる!」 😊
T先生
「いいね。膝が痛いときの運動は、膝の記事で話しているよ。腰の痛みが続くときは、気軽に相談してね。」
📚 参考文献
- Pocovi NC, et al. Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial. Lancet 2024;404(10448):134-144.
- Neason C, et al. Running is acceptable and efficacious in adults with non-specific chronic low back pain: the ASTEROID randomised controlled trial. British Journal of Sports Medicine 2025;59(2):99-108(オンライン公開2024年).
- 日本整形外科学会・日本腰痛学会『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』南江堂, 2019.
- Roffey DM, et al. Causal assessment of occupational sitting and low back pain: results of a systematic review. The Spine Journal 2010.
- NHS. Back pain(2026年3月5日更新:緊急受診の目安)。