T先生!80歳近くなったら、コレステロールの薬はやめてもいいの?

(文末の参考文献をもとに、一部AIを用いて作成しました)
✅ この記事のまとめ
心筋梗塞や脳梗塞などを起こしたことがなく、ほかに持病が2つ以上ある70歳以上の人が、予防のために飲んでいたコレステロールの薬(スタチン)をやめても、約2年では心筋梗塞・脳卒中・死亡ははっきりとは増えませんでした。
ただし観察期間全体(最長4年)では、やめた人のほうが心筋梗塞・脳卒中・死亡がやや多い結果でした。
すでに心筋梗塞・脳梗塞やステント治療をした人は自己判断でやめず、やめるかどうかは主治医と一緒に決めましょう。
たろうくん
「T先生!もうすぐ80歳のおじいちゃんが『薬が多くて飲むのがきつか。コレステロールの薬くらい、やめてもよかろう?』って言ってたよ。やめてもいいの?」
T先生
「薬が多いと、毎日飲むだけでも大変だよね。ちょうど2026年11月に、飲んでいる薬を『やめる』とどうなるかを調べた試験の結果が発表されたんだ。でもその前に、一番大事なことを確認しよう。」
🩺 まず確認:何のために飲んでいる?
T先生
「コレステロールの薬を飲む理由は、大きく分けて2つあるんだ。」
📌 コレステロールの薬を飲む2つの理由
・再発予防:心筋梗塞・狭心症・脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)を起こした人や、心臓・首・足の血管にステントや手術などの治療を受けた人が、もう一度起こさないために飲む
・予防:まだ一度も起こしていない人が、最初の1回を防ぐために飲む
T先生
「再発予防で飲んでいる人は、今日の試験の話には当てはまらないよ。日本のガイドラインでも、高齢の方でスタチンに狭心症・心筋梗塞や脳卒中の再発を防ぐ効果が認められていて、狭心症・心筋梗塞のあとの再発予防には勧められているんだ。だから自分の判断でやめちゃダメだよ。それから、生まれつきコレステロールがとても高い体質(家族性高コレステロール血症)の人も、この試験には入っていないよ。」
たろうくん
「おじいちゃんは、心臓も脳も病気をしたことはないって言ってたよ。」
T先生
「それなら『予防』のほうかもしれないね。念のため、次の受診で主治医に『何のために飲んでいるか』を確かめておくと安心だよ。」
🔬 スタチンを「やめる」試験:70歳以上の1,880人
📌 試験の中身(2026年11月、米国心臓協会の学術集会で発表・医学雑誌NEJMに掲載)
・スイス・フランス・オランダの24施設
・70歳以上で、ほかに持病が2つ以上あり、心臓や血管の病気(心筋梗塞・脳梗塞など)を起こしたことがない、予防のためにスタチンを飲んでいた1,880人(平均77歳)
・くじ引きのような方法で「やめる」938人と「続ける」942人に分けて比べた
📊 やめたらどうなった?
たろうくん
「それで、やめた人は大丈夫だったの?」
📊 結果
・約2年の時点:心筋梗塞・脳卒中・死亡(合わせた数)は、やめてもはっきりとは増えなかった
・ただし計算上は、2年間でやめた40人あたり1件、心筋梗塞や脳卒中などが余分に起きた
・最長4年まで追った期間全体で、心筋梗塞・脳卒中・死亡のどれかが起きた人はやめた人12.7%、続けた人9.2%
・生活の質・筋肉の痛み・転倒・筋肉のやせ(サルコペニア)は、差がなかった
T先生
「つまり、やめても約2年では、はっきり危なくなるとはいえない。でも、時間がたつと心筋梗塞や脳卒中が少し増えるかもしれない、ということなんだ。」
たろうくん
「えっ、筋肉の痛みも変わらなかったの?やめたら楽になると思ってた。」
T先生
「この試験では差がなかったんだ。ただ、薬の副作用の出方は人それぞれ。筋肉の痛みが気になるときも、自分でやめずに主治医に相談してね。」
🤝 じゃあ、やめたほうがいいの?
たろうくん
「じゃあ、やめたほうがいいの?やめないほうがいいの?」
T先生
「でもね、ここが大事なところなんだけど…研究にかかわった先生も、『この試験の対象のような人たちに、一律にやめるよう勧めることはできない』と話しているんだ。やめるかどうかは、患者さんと主治医が一緒に話し合って、一人ずつ決めるものなんだよ。それに、これはヨーロッパの人のデータだから、日本人にそのまま当てはまるかはまだ分からないんだ。」
🏥 主治医に相談するときに伝えたいこと
1. 何のために飲んでいるか(予防か、再発予防か)を確かめる
2. やめたい理由(薬の数が多い・飲むのがつらい・副作用が心配など)
3. これからどう過ごしたいか。ほかの薬も分かるようにお薬手帳を持っていく
T先生
「それから、もしコレステロールの薬をやめることになっても、血圧・血糖の管理は続けてね。たばこを吸う人は禁煙もしてね。高血圧・糖尿病・たばこは、心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくする大事な要因なんだ。たばこは、高齢の人でも、やめている期間が長いほど危険が下がるとガイドラインに書いてあるよ。」
📝 まとめ!
✅ 心筋梗塞・脳梗塞・ステント治療をした人は、自己判断でやめない
再発予防の薬で、今回の試験の対象外です。まずは何のために飲んでいるかを確かめましょう。
✅ 一度も起こしておらず持病が複数ある70歳以上では、やめても約2年ではっきりした差はなかった
心筋梗塞・脳卒中・死亡ははっきりとは増えませんでした。生活の質や筋肉の痛み、転倒にも差はありませんでした。
✅ ただし「ゼロ」ではない
2年間でやめた40人あたり1件ほど心筋梗塞や脳卒中などが余分に起き、観察期間全体(最長4年)では、やめた人がやや多い結果でした。
✅ 自分の判断で急にやめず、主治医と一緒に一人ずつ決める
お薬手帳を持って、やめたい理由とこれからの過ごし方を伝えましょう。やめても血圧・血糖の管理は続け、たばこを吸う人は禁煙しましょう。
たろうくん
「おじいちゃんに『急にやめないで、何のために飲んでいるか、次の受診で先生に聞いてみよう』って伝えるね!」 😊
T先生
「いいね。薬を減らしたい気持ちも大事にしながら、主治医と一緒に決めよう。」
📚 参考文献
Rodondi N, Haller ML, Bardoczi JB, et al.『Discontinuing Statins in Older Adults without Cardiovascular Disease』N Engl J Med. 2026年11月7日オンライン掲載(試験登録 ClinicalTrials.gov NCT05178420)
American Heart Association『Discontinuing statins generally safe for older adults without heart disease』ニュースリリース 2026年11月7日
Aebi PS, Adam L, Haller M, et al.『Rationale and design of ‘discontinuing statins in multimorbid older adults without cardiovascular disease (STREAM)’: study protocol of a randomised non-inferiority clinical trial』BMJ Open. 2025;15(5):e093833
日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第3章 動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理』『同 第7章 高齢者』2022
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辻 隆宏(つじ たかひろ)
つじファミリークリニック 院長・医師
- 日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医
- 日本ペインクリニック学会認定 ペインクリニック専門医
- 日本内科学会認定 認定内科医
自治医科大学医学部卒業。八女市矢部診療所、宗像市国民健康保険大島診療所の所長として、へき地・離島の地域医療に従事。2022年6月、大野城市につじファミリークリニックを開院。