ヘッダー画像

医療コラム

T先生!痛いほうの足だけ、細くなってきた気がするんだけど?|つじファミリークリニック|大野城市東大利にある内科・ペインクリニック

T先生!痛いほうの足だけ、細くなってきた気がするんだけど?

📢 T先生!痛いほうの足だけ、細くなってきた気がするんだけど? 🏥

(下記の論文を元に一部AIを用いて作成しました)
出典: Uomi K, Sakai Y, Watanabe T, Matsui H, Sato R, Adachi Y, Takeichi Y, Tanaka T. “Neuropathic pain and sarcopenia based on skeletal muscle mass assessment following lumbar spinal stenosis surgery: a prospective observational study in Japan” Asian Spine Journal. 2026(オンライン掲載 2026年7月9日). doi:10.31616/asj.2026.0244 / 論文全文 / 国立長寿医療研究センター 「高齢者の神経障害性疼痛はサルコペニアと関連があることを明らかにしました」(プレス発表 2026年7月17日)/ プレスリリース

この記事のまとめ
片方の足だけしびれや痛みがある人を調べると、痛いほうの足の筋肉だけが、反対側より少なくなっていました
しかも手術で痛みが取れた人は、その後筋肉が増えるほうへ動いていました——痛みが続くことは、筋肉が減ることと関連していたのです。
足のしびれ・痛みで歩く距離が減っているなら、年のせいにせず一度ご相談ください。


たろうくん
「T先生!おじいちゃんがね、『右足がしびれて痛い』ってずっと言ってるんだ。この前おふろで見たら、右足だけ細くなってた気がするんだけど、気のせいかな?」

T先生
「たろうくん、それはすごくいいところを見ているよ。気のせいじゃないかもしれないんだ。ちょうど今年、日本の研究チームがまさにそれを測った論文を出してね。」

たろうくん
「えっ、測れるの!? 足の太さを?」

T先生
「太さじゃなくて、筋肉の量をね。国立長寿医療研究センターの整形外科のチームが、腰部脊柱管狭窄症——腰の神経の通り道が狭くなって、足がしびれたり痛くなったりする病気だよ——で手術を受けた患者さん421人を追いかけたんだ。平均年齢は74.7歳。男性231人、女性190人だよ。」


🦵 同じ人の、右と左をくらべる

たろうくん
「421人か…でも、その人たちがもともと細かっただけかもしれないよね?」

T先生
その通り! 今ものすごく大事なことを言ったよ。年齢も、食べるものも、運動の習慣も人によって違うからね。だからこの研究は、同じ人の右足と左足をくらべたんだ。同じ人なら、条件は全部いっしょだろう?」

たろうくん
「あ、たしかに!」

T先生
片方の足だけに痛みやしびれがある人260人を選んで、専門の機械(DXA)で左右の筋肉の量を測った。結果がこれ。」

📌 手術前の下肢の筋肉量(片側だけ症状がある260人)
痛みのある側: 5,917.1 g
痛みのない側: 6,001.3 g
・差は約 84 g(統計的にも意味のある差/p<0.05)
出典: Asian Spine Journal 2026

たろうくん
「ほんとだ、痛いほうが少ない! でも84グラムって、そんなに大きい?」

T先生
「1.4%くらいだから、見た目ではまず分からない差だね。でもね、ここで大事なのは大きさじゃなくて”向き”なんだ。同じ体の中で、痛いほうだけがきちんと負けている。偶然ではこうはならないんだよ。」

たろうくん
「うでは? うでも細くなってたの?」

T先生
それが面白いところでね。同じ人の左右の”腕”を測ると、差はなかったんだ(2,116.4 g 対 2,120.4 g)。症状が出ている足にだけ起きている——これは大事な手がかりだよ。」


🧠 「動かないから」だけじゃない

たろうくん
「痛いとかばっちゃうから、使わなくて減っちゃうんだよね?」

T先生
「うん、それが一番わかりやすい理由。でもね、ここがとても面白いところなんだけど——研究チームは、それだけじゃないかもしれないと考えているんだ。」

たろうくん
「えっ、ほかにも理由があるの?」

T先生
「神経が傷ついて起きる痛みを神経障害性疼痛っていうんだけどね。このとき、背骨の中の脊髄でミクログリアという細胞が増えて、炎症を起こす物質を出すことが知られているんだ。研究チームは、その物質が筋肉を減らす方向に働いている可能性を挙げている。」

たろうくん
「じゃあ、動いてても減っちゃうかもしれないってこと?」

T先生
まだ”かもしれない”の段階だよ。この研究では炎症の物質そのものは測っていないから、証明されたわけじゃない。ただ、痛みは”我慢していれば体は無傷”というものではない——ここは覚えておいてほしいな。ちなみに神経障害性疼痛は、日本の成人の約6.4%が持っていると推定されていて(2010年の調査にもとづく推計)、高齢の方に多いんだ。」


🌱 痛みが取れると、筋肉は戻る方向へ動く

たろうくん
「じゃあ、もう減っちゃった筋肉はあきらめるしかないの…?」

T先生
「そこがこの論文のいちばん嬉しいところなんだ。手術のあと1年たって、みんなをもう一度測ったんだよ。」

📌 手術から1年後(片側だけ症状のある260人)
痛みのあった側は筋肉が増える方向へ(ただし単独では統計的にはっきりせず/p=0.6296)
痛みのなかった側はほぼ変化なし
左右の”変化のしかた”の差は、統計的に意味のある差(p<0.05)

T先生
「さらに、手術を受けた421人全体で「筋肉が増えた人」と「減った人」に分けてくらべると、こうなった。」

📌 筋肉が増えた人と減った人(手術を受けた421人全体)
筋肉が増えた人(219人)の術後の足の痛み 2.46
筋肉が減った人(202人)3.18(10点満点のものさし/p=0.0294)
手術前の痛みは両方のグループでほぼ同じ(6.47 対 6.45)

たろうくん
「痛みが軽い人のほうが、筋肉が増えてる! しかも手術前の痛みは同じくらいだったんだね。」

T先生
「そうなんだ。しかも痛みがしっかり取れた177人では、痛かった側だけでなく反対側の筋肉も増えていた。痛みが取れると、体全体が動きやすくなるということだね。」

たろうくん
「じゃあ、手術さえすれば筋肉は勝手に戻るの?」

T先生
そこは正確にね。この研究の患者さんは全員、手術の翌々日から歩きはじめて、足の筋トレと歩く練習を含むリハビリを受けているんだ。“手術+リハビリ”のセットでの結果だよ。」

たろうくん
「なるほど、リハビリもセットなんだね。」

T先生
「うん。どちらが先かはこの研究では決められない——痛みが取れたから動けて増えたのか、筋肉があったから痛みが軽いのか。でも少なくとも、痛みと筋肉は同じ方向へ動く平均75歳前後の方でも、1年で筋肉が増える側に回れるんだよ。」


⚠️ この研究で言えないこと

T先生
「正直に言っておくね。これは手術を受けた腰部脊柱管狭窄症の患者さんの研究で、ふつうの腰痛やひざ痛の人にそのまま当てはめることはできない。観察した研究だから、「痛み→筋肉が減る」という因果も証明されていない。それに参加できたのは、自分で歩ける状態の方なんだ。研究チーム自身も、追跡が1年と短いことひとつの病院だけの研究であることを限界に挙げているよ。」

たろうくん
「じゃあ、ぼくたちは何をすればいいの?」

T先生
“痛いから歩かない”を、放っておかないこと。それだけでいい。これは今回の研究の結論というより、ふだんの診察での目安だけどね——歩ける距離が去年より短くなった痛くて途中で休むようになった。これは年のせいじゃなくて、相談していいサインだよ。」


📝 まとめ!

痛いほうの足だけ、筋肉が少なかった — 片側だけ症状のある260人で、痛みのある側 5,917.1 g/ない側 6,001.3 g(p<0.05)。腕には左右差なし

「使わないから」だけではないかもしれない — 脊髄のミクログリアが出す炎症物質の関与が挙げられています(まだ仮説。この研究では未測定)

痛みが取れると筋肉は戻る方向へ — 手術を受けた421人全体で、筋肉が増えた人は減った人より術後の足の痛みが軽い(2.46 対 3.18/p=0.0294)。ただし全員がリハビリを受けています

神経障害性疼痛は日本の成人の約6.4% — 高齢の方に多く、「年のせい」で片づけられやすい痛みです

受診の目安は”距離” — 歩ける距離が去年より短い、途中で休むようになった。ひとつでもあれば一度ご相談ください


たろうくん
「おじいちゃんに『我慢しないで』って伝えるよ。ありがとうT先生!」 😊

T先生
「うん。痛みを我慢することのほうが、体には高くつくことがある——それだけ伝われば十分だよ。いつでも聞いてね。」